誰か
誰かへ届きます様に
うんわかるよって言葉が欲しくて
今日もしゃべりすぎた
スノードームの雪の様に
矢継ぎ早に言葉を舞い散らせただけ
で
澱となった
何やってんの私
本心を伏せたまま 大人ぶっちゃって
誰か誰でもいいから私に一言
わかるよって言って
押しつぶされそうな心で本に逃げ込んだ
そうしたら
自分語りのような詩の一編に
わかるよが散りばめられていて
詩の散歩を終えた頃には心がぽわぽわに戻っていた
出会うべくして出会ったの
詩集 大人をお休みする日
遠い足音
ただいまー
帰宅した我が家は学校の延長のようになっていた
ドタドタガヤガヤ子供達のエネルギーを
抱えきれずに家が悲鳴を上げているかのよう
玄関の靴の数からしてざっと20人
それにしてもすごい数
天井が抜けるわよーと叫んだものの
覗き見しようと2階へあがると
4部屋におさまりきれない子たちが廊下や踊り場に溢れて行ったり来たり
この家に越して間もなくのハプニングだった
夜まで子供達の足音が絶えることはない
それが毎日のように続くものだから
我が家は新設の塾だと久しく勘違いされていた
あれから30年
今、孫のお気に入りが押し入れからのジャンプ
サポーターのばあばは悦にいってもっと遠くへとエールを送る
天井が抜けるわよーやめなさい
一階からママが叫んでる
懐かしいセリフにどれどれと好奇心で下へ降りて来た
トントンドーン確かに家が悲鳴を上げている
が、私には遠い足音が時を超えてもどってきたようで懐かしい
老夫婦2人きりで後何年ここにいられるかしら
そう思うと我が家までもが昔を思い出して喜んでいるようだ
急いで2階へ駆け上がり
今度はばあばがとんでみるからねー
次は一緒にジャンプしようか
新しい思い出を増やすぞー
孫の足音を増幅する様にドンドーン嬉しい悲鳴を上げるこの家
まだまだ現役で勿論、天井は抜けたりしなかったわ
秋の訪れ
半袖で汗かきながら出かけた先では
花屋のディスプレイにお月見アレンジが並んでいる
浅草寺では菊供養会のアナウンス
日本は肌感より、行事で秋を知る国になったのかしら
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悟った気分でいたら
ネットではおせちの予約クーポンが既になくなっていた
エッまだ10月に入ったばかりでしょ
おせち不足?慌てたのなんのって
それが聞いてよ何と8月から配布してたって
いくら何でもやりすぎじゃない
商売が季節を無視して動いている
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気象が変化しているのは確かです
72候の暦を信じるか信じないかはあなた次第です
ですがこのままでいいのでしょうか?
日本の文化が失われてしまいますよ
せめて行事だけは残してくださいな
日本が四季を宝に自然と共生してきた歴史を忘れないためにも
先人からのメッセージが降ってきて私の戸惑いと同期した今年の秋
旅は続く
世界遺産番組をチラ見しながら
オレなんか60カ国は旅してるな
まあそれでもまだまだ行きたい所だらけで
目標の道半ばだよ
聞こえよがしにアピールするのは旦那です
それだけ行ってりゃ後は似たり寄ったりでしょ
と心の声が…
しかし、彼が言う旅とはバックパッカー的な
手作りで好奇心を120%満たすもの
プラン、チケット手配等事前準備はもとより
予定調和の快適安全とは無縁な旅行
異文化コミュニケーションを楽しみながら現地を味わう、ハプニングや失敗こそがお金を積んでも得難い経験で旅の醍醐味なんだって
心配性の私には絶対無理!気がしれないわ
こんな話を他人にすると必ず何カ国語喋れるのって聞き返される
その都度、うーん6カ国語くらいは喋れるかなとあっけらかんと言ってのけ
事情を知ってる私はこっちが赤面してしまう
だって確かに英語はそこそこだけど…
他は挨拶程度なんだから
相手が人ならハートで伝わると豪語して譲らない
彼にとっては言葉の壁なんてどうにでもなるものらしい
専ら1番のハードルは資金と旅嫌いの私のOK なのだ
モノクロ
わあー水墨画みたい
こんなの初めて
海からの湿った冷気が山肌を伝い
絶景にみとれる私を包む
ひんやりとした曇り空の下
水平線はかき消され雲が降り雲が湧く
そこは一面の雲海と点在する島々だけの世界
ドローン映像さながらの光景が360度の残像となって私をのみこもうとする
低く垂れ込む灰色の空
ねっとり摺った墨色の黒々とした小島と薄墨の雲海が奏でるモノクロの幽玄美
これって雨上がりの日の特権ね
ここは多島美で知られる海の景勝地で
私の故郷
その海が消えた景色に出会えるなんて
コレは千載一遇!幼馴染に知らせなくっちゃ
と思った時には
既に雲間から切れ切れの海が顔を出していた
故郷を離れて久しい
たまに記憶から取り出してはあの軌跡の瞬間に浸っている
20年経っても全く色褪せないどころか年々深みを増して身近に感じるの
コレって齢をとったってことだよね
この先私にお呼びがかかっても、
あの時見た景色があの世で待っているなら
悪くないって思うのよ いや本当
モノクロに心鎮まる冬齢