soumatou

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8/29/2025, 6:57:17 AM

夏草

手入れの行き届いたハーブガーデン
これが夢だったの

夏の陽射しにも負けず花を咲かせ緑のエネルギーをくれる
たくましい子達 なんて可愛いんでしょう

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その中にあって異質感を放っているのが
レモングラス 

大きくなって美味しいお茶になあれ
トムヤムクンいいね、タイ料理にしてあげるって
その成長を楽しみに大事に植えて
大きく育てよと放任してたら
わがまま一杯に育ち草むら出現
えっ?
ここは何処?
夏草や兵どもが夢の跡…

レモングラス揺れてタイの風来る夏草の家
レモングラスの密林に夏草の家夢の跡

8/28/2025, 12:47:47 AM

ねえ何処?
ここにあるっていうから

ここだよ
ここにあるよ
ほらね
パッ
あー隠してたんだ

いやいや
たまたま見つけたんだよ
ペンダントなんて珍しいね


ねえ覚えてる?
これ50年前の初めてのプレゼント
指輪はいらないからって買ってもらったの

あー確か結婚指輪で嫌な思いしたからリングはいらないって言ってたっけ

そうそう

こちら14と16
「奥様が16ですよね」
って何度も確認されて
そうでなくても うら若き乙女が
最大のコンプレックスを晒す場所での出来事だったから 私は一生忘れない

お母さんの手 働き者の手って言い換えてくれる人もあったけど慰めにはならなかった
手ブスって他人の目がそう語っていたトラウマは消えないわ


ところがこの間YouTubeで手相見てたら
私の手ラッキーの宝庫だったのよ
信じられる?
ご先祖様に守られて金運家族運健康運…未来バラ色
このシワシワの掌がねー
幸せの源がここにあると知ったとたん
何だかこの手がいとおしくなってきたの


ねえ金婚式には指輪解禁するから一緒に愛でて


8/27/2025, 1:17:44 AM

素足のままで

猛暑だ酷暑だとこの夏もTVが騒がしい

強烈な陽射しがサングラス越しに刺さる
うっかり触ったバルコニーの手すりも床もアチッチ火傷寸前
危険な暑さ熱さを肌身で感じる毎日

防災アナウンスは今日も熱中症警戒アラートを告げている…

こんな日中に裸足で歩く人がいる?
いないよね
もう見てられない!
ちょっとそこのあなた大丈夫?
ワンチャンは素足のままなんだけど…

あらどうも、大丈夫ですよー
肉球の毛伸ばしていますから
まあ断熱靴下履いている様なものです
素足じゃないんですよ

実は私、その研究中で
いろんな犬種とお散歩しているの
今日はこのレトリーバーちゃんだけど
昨日は豆柴ちゃんだったのよ

そ、そうですか…
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あれから1年……
靴より負担の軽い装着肉球毛が大ヒット

あなたのかわいいワンちゃんに是非
発売記念特典タグ付いています

〜ご心配には及びません
    夏冬兼用 断熱靴下履いています〜

8/26/2025, 1:53:56 AM

もう一歩だけ
誰かの優しい声がする

あと一歩
誰かが背中を押してくる

その繰り返しの中で
僕はあなたの人生を生きてきた
とっくに気づいてはいたんだよ…
もうすぐあなたの夢が叶い
あなたが僕に置き換わってしまう

でもあなたに飲み込まれてしまう前に
1%の僕が抗い始めたんだ
もう
もはやこれまでって

もう一歩だけ、
もう一歩で、
あの声が執拗にすがりついてくる

僕は涙声で別れを告げる
母さん僕はいい子のままでいたかったよ
机のキズを心のはけ口にすることですむなら
でもねこの瀬戸際にきて
1%の自分が封印してきた扉を開けてしまったんだ
もう引き返さない
今日を僕が悔いなく生きるはじめの一歩にするんだ

空が白んできた
東の窓の太陽はまだ遠い
浄化されひんやりした大気を深く吸う
鳥の囀りが1日の始まりを告げている
巣立ちをしくじったあの場所からの巣立ち


よし
母さんに会いに行く

8/25/2025, 1:23:42 AM

見知らぬ街



初診時
紹介状を握り締め都内の知らない街へ降り立った
そこはコンクリートに覆われたビルの谷間
沢山の人が無表情で足早に行き交う中で
私はさながら迷い込んだ子猫のようだった
乗り慣れない路線の電車を乗り継いでここまで来たのには
そこまでしても会いたい医師がいたからだ


行きだけで路線アプリを何十回開いただろう
勿論手書きのメモもスクショも撮っていた
それでもドキドキ不安しかない
道中トラブルが起きず予約時間に病院へ辿り着けるか…
というのも私は極度の方向音痴なのだ
あれほどこだわっていた診療の事など入り込む余地がない

ようやく最終駅に着いた
地下の人波に押されるように出口へ向かう
立ち止まって出口3を確認したいが進むしかない
予めシュミレーションしていた場所にいることを信じて左手階段を上がる

やっと出た
地上だ 
浅い呼吸を一つしたところで息をのんだ
そこは田舎者には気後れするような都会だった
街の喧騒がドッと押し寄せ音圧にくらっとするビルの壁脇に立っているのがやっとの状態で
エネルギーを使い果たした

これからが本番だというのに既に拒絶された気分だ
自分が望んだ医師に会える期待と不安を抱えて
そそり立つビルを呆然と見上げた
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あれから1年半 毎月の通院
乗り換えの度 同じ路線で迷子になるという失態を繰り返しながら 今日もあの診察室を目指す

患者に寄り添う真摯な人
彼がそこで待っていてくれる幸運に引き寄せられるように
猫まっしぐらだ
見知らぬ街の只中を脇目もふらずに




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