ここは沖縄西表 ネイチャーを感じるぅー
sup の立ち漕ぎにも慣れたし一安心
この辺でちょっとリラックスタイム
ボードに仰向けで寝そべると
景色が一変した
サングラスをずらして覗き見る
わー ぬけるような青空が広がっている
自然と一体化する感じ これこれ最高の贅沢
川面をゆらゆらプカプカ
ガガガ….突如ボードの底から鈍い音がしてきた
慌てて上半身を起こした途端
左右にグラグラっと来てそのままバシャン
誰か助けてー パドルはどこ?
慌てふためき手探りで水面をかく
掴んだのは何とマングローブの根
えっ やおら上半身を起こすとボードが林の浅瀬に乗り上げている
川底に尻もちをついたまま
空に向かってジタバタして
一人芝居状態だった?
ゴキちゃん役の私めがけてクモの糸が…..否否
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いやー思い込みは怖いね
川の真ん中を悠然と流れていたつもりだったから ハプニングに溺れるんだスイッチが作動したんだね
そしたら身体が勝手にこわばっちゃうつまりは理性でコントロールできなくなるんだよ人は
そう言えば子供の頃海で溺れかけたことがあったっけ 足がつって海の深みに引き摺り込まれるようなあの恐怖を身体が覚えていたのかも
思い込みとトラウマには御用心ください
「はじめまして」
切れ長の目にキリリとした眉
見るからにしっかり者って感じの女の子から
挨拶をされた
へえ〜こういうタイプの子が好きなんだと
あいさつもそこそこに見入ってしまったのは
息子が結婚相手を連れてきた日のこと
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彼が女の子を紹介したのはこれが初めてで
それまでそんな話題も聞いた覚えがない
いろんなステップすっ飛ばし
いきなりお嫁さん(数ヶ月後には)とのご対面だからね
キツネにつままれた感は当然でしょう
性格も家庭環境も何もサッパリわからないまま
よく言えばまっさらの先入観なしで彼女に出会った
息子が自信たっぷりの直球を投げて来たって感じかな
男の子って用件しか言わないから
『今度会ってね じゃあ……」ってことで
迎えた日 本当にはじめまして気分だったわ
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この10年 思いもよらない苦難もあったけど
貴方の覚悟と決断力が皆の指針になった
今では褒め言葉しか浮かばないほど家族全員が貴方にぞっこん
彼女を見初めた息子よ でかした
そしてあの日君の球をかわさず
見事受け止めた私達もナイスだったんじゃない
初々しく歯切れ良い はじめましての子は
我が家の宝物になったよ
何が起きても明るい方へ舵をとってくれる人
たまには甘えてくださいな
くれぐれも身体を大切にね
本番行きまーす
男1) またねぇ! (又なの?)
女1) ごめん!もう一回だけお願い🙏
男1) いんや (いいえ)
これで何度目だ
もうまたねえから(待たないから)
女1) そんなこと言わないで
男1) じゃぁ またね(バイバイ)
監督) カーット
ちょっとちょっと訛ってるよー
もう一回やり直して
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舞台袖
女2) ったく
出番来ないじゃないの
もう待たないわ
次予定入ってるし私帰る
じゃあまたね!
男2) そんなこと言わないで
誰だーセリフ被せるんじゃないよー
おあとがよろしいようで
またね!
春風とともに
春よ来いと歌っていたのは遥か昔
寒さで固まった膝関節に
花粉症で引きこもった間に付けた脂肪
全く溜息しか出ない
あーあ又この季節
否応なしに毎年春風が問うてくるよ
待ったなし夏は直ぐそこ
怠惰な時間を後悔するだけか
ここがターニングポイントだよ
どうするどうするー
そりやぁこれからの季節楽しみたいよ
暖かくなったし よし ピラティス再開
ビギナーじゃ効果薄そうだから
中級者クラスあたりから始めてみようっと
iPadから聞こえるトレーナーの声
『はい呼吸が大切よ』
『まずはお腹を引っ込めながら息を吸う💨』
何?どういうこと?
お腹に力が入らないんですけど
花粉症の咳で腹筋は鍛えられてたんじゃ……
膝どころかお腹の筋肉までなくなっちゃたの
息をするってこんなに難しかったっけ
こんなはずじゃ…….
『はい お腹をえぐるように息を吐く💨』
待ってまって〜無理ッ
春風さんちょっと冬に巻き戻してくれる
とりあえず一週間
トレーニング前に病後の回復期間が要るみたい
私の願いが通じたんですかね
夏日の後に寒さがどーんと戻って来ちゃった
春風さんありがとう私腹式呼吸を取り戻すから
次会う時はさあがんばれって後押しよろしく!
『涙が溢れて辛い』と言葉少なに母が言った
えっ 何かあった?
ドキン 私の胸が一瞬固まった
我慢強く感情や身体の不調を周りに出す人ではなかった母が辛いという
弱音など吐いたことのない人が私を頼るなんて
それ程の抱えきれない辛さって……一大事だ
気づかれないよう背中で深呼吸をした
「涙が止まらないほどのつらさって」
母の傍らに座り 優しく語りかけた
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『涙が溢れて出て止まらないんよ
一日中目の縁に涙が溜まったままで
拭き取ってもこぼれ落ちてくる』
えっ
母の眼を覗き込んだ
確かにウルウルして涙で満ちている
『見えにくくてね…』
母の言葉をさえぎって急ぎ問うた
「いつからなの?」
『もう何ヶ月も前から』
目の縁が赤くただれてしまっている
「何で早く言わないかな眼科で診てもらおう」
いつもの責めるような口調で言ったに違いない
病院嫌いの彼女だったが 拒否しなかった
シフトを調整して老いた母と病院へ行った
涙腺が詰まって鼻に抜けなくなってると言う
目薬と軟膏をもらって
これで治るよ良かったねと母に言い
私は重荷から解き放たれた気分だった
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またいつもの忙しい日常に私はサッサと戻った
肝心な母の眼が治ったのかの記憶がない
直ぐには完治しないよと言ったような覚えが薄っすらあるだけだ
母を見送って久しい 今
自分が病を抱え常に不調な時間を過ごしている
調子はどう?
周りの何気ない一言に癒しと力を貰っている
お母さんごめん
あの頃の私には言い出せなかったことが沢山あったよね
今思い出して 私 後悔の涙が溢れてくるよ