ああ、なんてことだ。
今日もしてしまった。
明日はやらないと心に誓った昨日。
やはり一度やってしまうと止められないのか。
体が重い。視界がなんだかおかしい。
ドラッグなんかに手を出すんじゃなかった。
俺の人生が、価値が、落ちていく。
彼と過ごした8ヶ月は、色んな体験をさせてもらったの。
2人でご飯食べたり、ゲーセン行ったり、イルミネーションを見に、夏祭りに行ったり。
数え切れないくらいの幸せが袋詰めされていた。
身体だって彼に捧げたし、妊娠したらどうしようなんて心配もしていた。甘い言葉に誘われて、重低音のある声に興奮して…あぁ、気持ち悪い。
今となっては黒歴史というものだけど、なんだかんだ楽しかったよ。
ありがとう。
恋人同士になってからはや1ヶ月。私達はまだ手を繋いだことすらなかった。
だから、手を繋いでみたかった。
「あのさ」
「ん、どうした?」
一息ついて
「手、繋がない?」
「え」
彼から返ってきた言葉。それは、驚きや困惑混じりの声だった。
でも、彼は一言
「べ、別にいいよ…?」
頬を赤らませて彼は言った。
私は寒さで冷たい自分の手を彼の手に絡ませた。
「手、あったかいね」
「そうかな?ただ君の手が冷たいだけだとおもうけど…」
そんな他愛もない会話をして過ごす日々はとてもかけげえのない日々だ。
『手を繋いで』
あれだけ私を説得しようと頑張ってくれたのに。
辞めてほしいって言ってくれたのに。
「…ごめん」
私は、あなたの希望に応えられない。
屋上から見る景色はいつもよりも綺麗に思えた。
フェンスを乗り越え、少しの足場に脚を下ろす。
「ありがとう、ごめんね」
脚を宙に浮かせると、重力にしたがって落ちていく。
─────────グシャリ。
『ありがとう、ごめんね、』
部屋の片隅で声を殺して泣いた。
私は私自身を殺したくてたまらなかった。
だって、親友に恋に落ちて、しかも私と性別は一緒。こんなのおかしい。
私は何度も自分に言い聞かせた。あの子が…紗夜が好きじゃないって。
でもね、その言い聞かせは私自身に届かなかった。
結局、好きだったみたい。
一線を超えたことをしたかった。
ハグして、キスして、体を重ねる。
こんなことは一生できないのに、こうやって考えてしまう自分がだいっきらいで仕方がない。
もう死んでしまおうか。
死んでしまえば、全てから解放される。もう、何も考えなくていい。
勉強のことも、部活のことも、紗夜のことも。
気づけば窓から光が差し込んでいた。
わたしは、きょ う 、す べ て からか い ほう さ れるん だ
『部屋の片隅で』
この話は、12月3日投稿の『さよならは 言わないで、』のサイドストーリーとなっております。もしよければ、そちらの方も読んでくださると嬉しいです。