Thema「プレゼント」
中学生の頃、お父さんに。
「キャンプしてみない?」
そう誘われ、キャンプをしてみた。
それから私はキャンプにドハマリした。
ただキャンプ道具はあまりにも高くて、中学生が買えるようなものじゃなかった。
だから私は「バイトしてキャンプ道具をたくさん買う!!」とか言ってた。
そしてなんだかんだ高校生になって、バイトして、キャンプして。
信頼できる最高の友人ができて。
キャンプが私を導いてくれた。
あ、あとキャンプに誘ってくれたお父さんにも感謝してる。
「ありがとう」
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高校3年生の頃。
「そういえば、進路決まったんだっけ?」
「うん。決まったよぉ」
「そっか」
今までは何回か一緒にキャンプしてたけど、3年生になってから色々進路とか大変で行けなくなっちゃってたな。
あぁ、もう少しで言えそうなのに。
この素直な気持ちを伝えようと何回も思ったけれど、なぜか言い出せない。
でもその『最高の友人』は、そんな私が言い出せなかった言葉を、当たり前のように言ってくれた。
「お互い進路決まったんなら、卒業前に行こっか。キャンプ」
その時。誘ってくれた嬉しさと、私がその言葉を言い出せなかった後悔の2つで感情がごちゃごちゃになった。
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バチバチと焚き火の音がする。
焚き火って癒されるな。
「ねぇ、」
一緒に焚き火を眺めていたとき、『最高の友人』はこう言った。
「早いね。高校終わるの」
「……っ」
そうだ。ずっと怖かったんだ。
卒業したら、もう一緒にキャンプすることなんてなくなっちゃうんじゃないかって。
卒業前に一緒にキャンプしちゃったら、悲しくて、もっと一緒にいたいって。
思っちゃいそうって。
「そう……だね」
少しの沈黙の後。
「たしか、一人暮らしだよね」
「そう。家族とも会えなくなるから寂しくなっちゃうなぁ」
親元から離れて一人暮らし。友達とも、会えなくなる。なのに『最高の友人』は寂しそうな雰囲気は全く出してなかった。
「また、一緒にキャンプしようね」
自然と、その言葉が出た。
彼女に対しての励ましの言葉のつもりでもあったけど、これは私自身の願望だな。
「遠くに行っちゃっても、またいつか会えるわけだし」
彼女は嬉しそうに言った。
「キャンプ誘うタイミング、上手いよね」
「え?」
「最初キャンプ誘ってくれた時さ、嬉しかったんだ。あまり高校生活に馴染めてなくってさ。でもキャンプしてみたら、なんかそんな気持ちも吹っ飛んじゃって」
「それで今、またキャンプ誘ってくれた。本当はさ、寂しいんだよね。いくら将来の夢を叶えたいとはいえ、大事な友達と別れるのは寂しいんだよ」
彼女はその『寂しさ』を隠しているつもりだったんだろうけど。
全然隠せてなかった。
涙、溢れてるじゃん。
「ありがとう、誘ってくれて。いつかまた一緒にキャンプできるんだって考えたら、頑張ろうと思えたよ」
ただ私の願望を言っただけだけど、その願望で『最高の友人』が元気になってくれたのなら嬉しい。
「私にとって最高の友達だよ!!」
そう言って、彼女は抱きついてきた。
「私にとっても」
「最高の友達だよ」
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あれから数年が経った。
未だに、一緒にキャンプはしてない。
しばらく連絡しないうちに、少し気まづく感じてきた。
やっぱしばらく会ってないと、少し気まづくなっちゃうんだな。
すると『ピンポーン』と音がした。
「宅配です」
なんだろう。
それを見た瞬間、涙が溢れてきた。
「あいつからか……」
そう。その『最高の友人』は、そんな私が言い出せなかった言葉を、当たり前のように言ってくれた。
「一緒にキャンプしない?」
手紙。
久しぶり!! 元気にしてる?私は元気だよ。実はさ、また今度そっちに帰るんだ。だからその時一緒にキャンプしない?私、お金っていう大人の力で色々買っちゃったんだ。そしてこれはキャンプしようねって想いを込めたキャンプ道具。私からの……
プレゼントだよ。
Thema「柚子の香り」
『疲れた』
そう思った時はお風呂に入浴剤を入れる。
「今日は柚子か」
4種類の香りがある入浴剤。毎回、目を瞑って選んでいる。そして今日は『柚子の香り』だった。
入浴剤を湯船の中に落とす。
きっと身体を洗い終わった頃には、全部溶けてるだろう。
そして身体を洗い、湯船を見ると。
「いい感じに溶けてる」
足からゆっくり湯船に浸かる。
「ふわぁ……」
なんでだろう。お風呂に入ると、1日の疲れが吹き飛ぶ。嫌なことも忘れられる。
しかも柚子の香りのおかげがは分からないけど、いつもより少しリラックスできてる気がする。
「いい香り……」
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今日は久しぶりの休日。
ということで。
「ちょっくら、お出かけっと」
私はバイクに跨り、寒い冬の時期に旅をする。
ここから有名な観光地までは、そこまで遠くない。日帰りで行くにはぴったりの場所。
にしても。
「寒いな……、確か1年に1度の寒波とか言ってたっけ」
全く。なんでこういう時に限ってこうなんだ。
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そして一通り有名な観光地を周ったりした。
「もう帰るか。明日も仕事だし」
休日に家でゴロゴロするのもいいけど、こういう旅をして癒されるのもいいなぁ。
そして帰り道、寒さに震えていると。
「天然温泉……」
温泉の看板が。
ちょうど身体冷えてるし、入ってみるか。
「おひとりですか?」
「はい。そうです」
お金を支払い。いざ。
「温泉だぁ!!」
の、前に。
しっかり身体を洗って。
よし。今度こそ。
ここの温泉は何種類かあるらしい。
「とりあえず気になったやつに……」
……!?、あれは。
『柚子温泉』
柚子…。
少し近づき、考える。
「うーん……」
するとほんわかと柚子の香りが。
私は吸い寄せられるように温泉に入った。
「ふわぁ〜」
冷えきった後に入る柚子温泉。
最高〜。
「……」
なんだろう。なんか柚子に不思議な親近感が。
私は柚子に向かってこう伝えようとする。
「柚子め、お前こと好きになったかもしれないじゃないか」
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仕事終わりに買い物をしていたときだった。
そいつと、目が合った。
「柚子……」
考えるより先に身体が動いた。
「ありがとうございました」
あーあ。買っちゃった。
あんなもん知っちゃったら、もう戻れないな。
そして私は今日も日々の疲れを癒すために。
優しい柚子の香りを感じるために。
お風呂に入る。