胡星 (小説書き)

Open App

Thema「柚子の香り」




『疲れた』

そう思った時はお風呂に入浴剤を入れる。

「今日は柚子か」

4種類の香りがある入浴剤。毎回、目を瞑って選んでいる。そして今日は『柚子の香り』だった。

入浴剤を湯船の中に落とす。

きっと身体を洗い終わった頃には、全部溶けてるだろう。

そして身体を洗い、湯船を見ると。

「いい感じに溶けてる」

足からゆっくり湯船に浸かる。

「ふわぁ……」

なんでだろう。お風呂に入ると、1日の疲れが吹き飛ぶ。嫌なことも忘れられる。

しかも柚子の香りのおかげがは分からないけど、いつもより少しリラックスできてる気がする。

「いい香り……」




━━━━━━

今日は久しぶりの休日。

ということで。

「ちょっくら、お出かけっと」

私はバイクに跨り、寒い冬の時期に旅をする。

ここから有名な観光地までは、そこまで遠くない。日帰りで行くにはぴったりの場所。

にしても。

「寒いな……、確か1年に1度の寒波とか言ってたっけ」

全く。なんでこういう時に限ってこうなんだ。




━━━━━━

そして一通り有名な観光地を周ったりした。

「もう帰るか。明日も仕事だし」

休日に家でゴロゴロするのもいいけど、こういう旅をして癒されるのもいいなぁ。



そして帰り道、寒さに震えていると。

「天然温泉……」

温泉の看板が。

ちょうど身体冷えてるし、入ってみるか。




「おひとりですか?」

「はい。そうです」

お金を支払い。いざ。

「温泉だぁ!!」

の、前に。

しっかり身体を洗って。

よし。今度こそ。

ここの温泉は何種類かあるらしい。

「とりあえず気になったやつに……」


……!?、あれは。

『柚子温泉』

柚子…。

少し近づき、考える。

「うーん……」

するとほんわかと柚子の香りが。

私は吸い寄せられるように温泉に入った。

「ふわぁ〜」

冷えきった後に入る柚子温泉。

最高〜。

「……」

なんだろう。なんか柚子に不思議な親近感が。

私は柚子に向かってこう伝えようとする。

「柚子め、お前こと好きになったかもしれないじゃないか」





━━━━━━

仕事終わりに買い物をしていたときだった。

そいつと、目が合った。

「柚子……」

考えるより先に身体が動いた。




「ありがとうございました」

あーあ。買っちゃった。

あんなもん知っちゃったら、もう戻れないな。

そして私は今日も日々の疲れを癒すために。

優しい柚子の香りを感じるために。

お風呂に入る。

12/22/2023, 2:36:01 PM