閉園する
私がもう一度やり直すきっかけとなった場所
私がもう一度前を向く勇気をくれた場所
ここがもうすぐ無くなる
まだ恩返しも何もできていないのに
でも私には覆す力はない
私にできること
いや、こうなる前から答えは決まっていた
私はここで命をもらった
だから今度は私が誰かの息吹となりたい
それが私の夢であり私なりの恩返し
強く変わらず生きよう
また明日から前を向くから
今夜は少しだけ、下を向かせて
~楽園~
僕は小さなキミの手から離れた
行く先はひたすらに遠く、青い
悲しませてしまったらごめんね
消えて空の一部になるまで
キミの笑顔を思い描いた
今日もどこかで風が吹く
~風に乗って~
何か良い方法はないか
画面に並ぶアルファベットの羅列を眺めながら
私は耽った
あと何日、何ヶ月、何年……
どれくらい貯金ができて何をしてどうする
10年後
20年後(そんなに生きる予定はないが)
分針が1目盛り進んだ
椅子を座り直し片肘を付く
今、秒針が2秒止まった気がした
画面を見てキーボードを叩く
あと何文字打てば未来は来るのだろう
分針が3目盛り
データを書き込んで試しにボタンを押してみる
エラー
考える(40秒)直す(15秒)確認する(5秒)
さて次は――
画面に並ぶアルファベットの羅列を眺めながら
私は耽った
~刹那~
から揚げにかけるレモン
刺し身につける山葵
牛丼にのせる紅生姜
スイカにふる塩
ハンバーガーのピクルス
あった方が良いもの
もしくは、ない方が良いもの
わたしにとっては
ミロのヴィーナスの両腕
~生きる意味~
case 59
「自死の前日、殺人を行ったようだな」
「はい、しかし彼はいたって品行方正で、この時まで悪事を働いたことがないようです。殺人も偶発的なものです」
「うむ、だがいくら事故でも他の者の命を奪った罪は大きい。永遠に地獄を彷徨うが相応しい」
「……は、はい」
「どうした?」
「いえ、何でも……それでは伝えてきます」
case 4
「揉み合いの末突き飛ばされ、頭を打ち死亡か」
「はい、相手方とは数年の付き合いだそうですが、酷く恨まれていたようですね。弱みにつけ込んだ脅迫や恐喝、さらには相手の恋仲である女性と……これ以上はちょっと」
「だが、殺生には至らぬ。今回の件で少しは改めただろう。此奴にはやり直すチャンスをやろう」
「は、はい……伝えてきます」
死者が溢れおざなりになった審判。
私は代わりに処遇を伝えるだけ。
どんなに理不尽で不条理でも。
それが私の役目。
それが私の役目。
それが私の……
~善悪~