またこの時が来てしまった
憂鬱だ
「今期の成就者数は82人です。目安を51%オーバーです」
「また、270万件を超えるクレームが寄せられています」
まいったな……
「大半のクレームは『2回は難しい』です」
仕方がないことだ
テスト運用で1回にしたら大赤字になったのだから
「次に多いクレームは『時間が短すぎる』です」
遅いと2回でも簡単になってしまう
速度を出すのもコストがかかるが致し方ないのだ
「直ちに改善策を講じてください」
成就者を減らして、クレームも減らせと?
上のものは平気で無理を言ってくる
そもそも私はこんな無茶なサービスは反対だったのだ
「では、来期からは3回で成就とし、
成就者数を見て適宜速度の調整を図ります」
不毛な拘束時間が終わり
私は外に出てその辺の柵に寄りかかる
はぁ、と嘆息すると上を見上げ、そして呟いた
「早く終わらないかなー、願いを叶えるサービス」
空には絶え間なく星が降り注いでいた
~流れ星に願いを~
この村のどこかにあるという財宝を求めて
私は一人はるばるやってきた
「村の外れの森にある洞窟には絶対に入ってはいけない」
数日滞在する旨を伝えると
村の長にそう忠告された
複雑な迷路になっていて出て来られなくなるだとか
さらには恐ろしい怪物が潜んでいるだとか
いかにも胡散臭いことを言っていた
活気がまるでなく風が吹けば飛んでいきそうな村だ
洞窟について村民へ情報を伺う
噂によると
道を間違えなければ帰って来られるそうだが定かではなく
そもそも怪物を恐れて誰も立ち寄らないらしい
私は道具屋でロープを買い占めた
崩れ落ちそうな店でロープもボロボロだったが問題は無い
すぐに自前のランプを持って洞窟へ向かった
買ったロープを繋ぎ合わせて近くの木に結び
もう片端を体に結んだ
聞いたとおり洞窟の中は複雑に入り組んでいて
ロープがなければ脱出は困難だろう
柔らかい土の感触を得ながらいくつもの分かれ道を進み
しばらくして行き止まりにたどり着いた
地面に散らばっているものを照らした瞬間
頭に強い衝撃を受けて私は倒れた
この村に来たことを後悔した
ここには怪物しかいない
意識が遠のき
おびただしい数の骸の中で私は眠りについた
~ルール~
朝
ずっと眠っていたい
昼
ずっと眠っていたい
夜
ずっと起きていたい
ずっとこんな模様です
~今日の心模様~
誰よりも青い芝生を作ることにした
水はけの良い土地に移り
日の当たる庭がある家に住み
芝刈りを怠らず
肥料も適度に与え
通気性や害虫対策も万全にした
毎日状態を確認して
雑草があれば雑草を抜く
何度も失敗を重ね
ついに誰よりも青い芝生を作ることができた
だけど
得られたのは上っ面の称賛と
虚しいほど青々とした芝生だけ
隣にはもう誰もいない
芝生のために捨ててきたものを思い出す
「もしもあの時ああしていれば」
選ばなかった未来の芝生を
見ることはできないのに
~たとえ間違いだったとしても~
外と中の境界に僕らはいた
お互いはとても小さいけれど
一つにくっつけば、大きくなれる
この小さな世界が僕らのすべて
みんなと一緒にビッグになるんだ
もっともっと
手を取りあって
周りを巻き込んで
もっともっと
誰かなんて関係ない
誰でも大歓迎さ
もっともっと
やったぞ!
これで僕らが一番の――
「ああ、落ちちゃった」
~雫~