case 59
「自死の前日、殺人を行ったようだな」
「はい、しかし彼はいたって品行方正で、この時まで悪事を働いたことがないようです。殺人も偶発的なものです」
「うむ、だがいくら事故でも他の者の命を奪った罪は大きい。永遠に地獄を彷徨うが相応しい」
「……は、はい」
「どうした?」
「いえ、何でも……それでは伝えてきます」
case 4
「揉み合いの末突き飛ばされ、頭を打ち死亡か」
「はい、相手方とは数年の付き合いだそうですが、酷く恨まれていたようですね。弱みにつけ込んだ脅迫や恐喝、さらには相手の恋仲である女性と……これ以上はちょっと」
「だが、殺生には至らぬ。今回の件で少しは改めただろう。此奴にはやり直すチャンスをやろう」
「は、はい……伝えてきます」
死者が溢れおざなりになった審判。
私は代わりに処遇を伝えるだけ。
どんなに理不尽で不条理でも。
それが私の役目。
それが私の役目。
それが私の……
~善悪~
4/26/2023, 2:09:29 PM