夕方、公園のベンチにて。
ぼくはひとり君を待ちぼうける。
寒さのピークはとうに過ぎたと、天気予報で言っていた。
雪の中、白い息を吐きながら、君と日が暮れるまで語り合ったのが遠い昔のようだ。
なぜだろう、今日はあの日よりもずっとずっと寒いような気がする。
『寒さが身に染みて』
気がつくと、なんと20年も生きていた。
取るに足らない日を積み重ね、間違いばかりの時間を刻み、ふと振り返るとここまで来ていた。
「まさか自分が成人するなんて」
ぽつりこぼすと、同級生に笑われた。
笑う隣の彼女は、思っていた通り振袖がよく似合っていた。
ひとが成人する姿は簡単に思い浮かべられるのに、自分のことなら夢か幻、想定外の出来事としか言いようがなく、頭の上には疑問符ばかりが浮かんでいる。
……きっと。
これから先の長い時間、この疑問符は私にずっと付きまとうに違いないのだ。
『20歳』
疑問符を浮かべながらも生きてこられた今に感謝します。
テレビをつけると、赤青緑……色とりどりの振袖姿の若者たち。
毎年「はたちのつどい」の様子を見るたびに、自分も、と志を新たにするけれど、一晩経てば何事もなかったみたいに、もとの自分に逆戻り。
「イベントを見たからって、気負うからいけないんじゃ?」
……全くもってその通り。
今日降った雪のことなんて忘れてしまおう。
これから幾度となく訪れる「雪の日」の中に、きっと「しあわせな雪の日」がたくさん混ざっている。
ネットで話題のお洒落カフェ。
甘い甘いケーキを平らげて、ふと、このごろ気になっていたことを君に聞いてみた。
「ねぇ、君って昔から甘いもの好きだったっけ?」
「ん? いや、別にそこまで好きじゃないけど」
ブラックコーヒーを飲みながら、君はきょとんとした顔をした。
「急にどしたのさ」
「だって、最近しょっちゅう『スイーツ食べ行こー』って誘ってくれるから」
「え、だってほら、それは」
『君と一緒に』