今日は8年ぶりぐらいに、高校の時の同級生に会う。
しかも3年間片思いしていた相手だ。
私にはもう付き合って長い彼氏がいるし、
彼への想いが残っている訳では無いけれど、
私にとってはかけがえのない想い出の人だ。
彼のおかげで「恋」を知った。
好きな人と学校の廊下で会えたときの嬉しさ。
バイトの出勤時間が一緒だったときの楽しさ。
二人きりで出かけたときの緊張。
その時の帰りの満員電車内での距離感でドキドキ。
他の女の子と話してるのを見たときのモヤモヤ。
最後の最後に告白できなかった後悔。
彼への想いが私に様々な体験をさせてくれた。
彼は私のことなんて唯の友達としてしか思ってはいないだろうけど、
私にとっては今も変わらずかけがえのない存在だ。
彼は私に「青春」をくれた人だから。
でも本当のところはどうだったんだろうと思うこともある。
二人きりでカラオケに行ったり、
二人きりで舞台を見に行ったり、
二人きりでイベントに参加したり、
全て誘ってくれたのは彼だった。
当時、周りの友達は言ってくれた。
「絶対に両思いだって!!」
当時、自信のない私はそんなことないと否定してばかりだった。
でも今、第三者の視点で考えてみると、もしかして両思いだったのかもって思ったりもする。
せっかくだし、お酒の勢いで聞いてみようかなんて考えてみる(笑)
会うのは夜なのに、目覚めた瞬間から彼のことばかり考えている。
まだまだ寝られるのに楽しみで寝られない。
彼を好きだったのは8年も前の出来事なのに、当時を想いだして乙女になっている。
「初恋」って本当にすごい
実家に帰ると、懐かしい思い出が蘇ってくる
家の近くの小さな自治会館、
そこで皆でおにごっこをしたな。
当時の親友と、近所の歳下の女の子、
あと裏に住んでたくそガキ兄弟(笑)
いつも遊ぶのはそのメンバーだった。
あの頃はあの頃できっと悩みはあった。
でも遊ぶ時は純粋に楽しんでいたし、楽しかった気持ちはなかなか消えなかった。
大人になった今の自分は、その心を失ってしまったことに気づかされる。
学生から社会人になり実家を出て、
かなり自由になったけれど、
その自由を謳歌できていない自分に嫌気が差す。
どんなに仲の良い友達と遊んだとしても、
あらゆる悩みや不安感をまとっているまま。
楽しかったはずの1日が終わればどっと疲れている。本当に楽しめたのかすらも怪しくなる。
……純粋だったあの頃に帰りたくさせる、この自治会館はもうすぐなくなってしまうらしい。
暗闇の中から、かすかに声が聞こえる
「君は今でも充分に頑張っているから」
「周りの評価なんて気にしなくていい」
「君は君のままでいい」
「君に救われた人もいるんだよ」
「君はできる人なんだから自信をもって」
途切れ途切れではあるけれど
間違いなくそう言っている声がする
今は毎日聞こえる訳ではないけれど
いつかこの声が大きく鮮明に聞こえる日が来ることを願っている
代わりがいないことなんて分かってる
お父さんとお母さんの娘は私だけだし、
お兄ちゃんの妹は私だけ
彼氏の彼女は私だけ
親友の親友は私だけ
家族や恋人、友達にとって私は
「世界でたった一人のかけがえのない存在」であることは分かってる
そんなの当たり前じゃないか
でも欲張りな私は
この広くて大きい社会の中でもそのような存在でありたいと思ってしまう
代わりなんていくらでもいるのに
私が突然消えたところで社会は回るのに
そんな理想とはかけ離れた自分に毎日嫌気がさして
自分を傷つけて
本当に自分を大切に思ってくれている人を
傷つけてしまうばかりだ
私は何のために生きていくべきか
そんなの答えは出てる
でもできない
何故なら私は欲張りだから
ガチャ
一人になったマンションの部屋の扉が突然開いた。
そこには誰もいない。
でも、ふわりと懐かしい香りがする。
大好きだった彼の匂い。
香水でもなく、柔軟剤でもなく、
彼そのものの匂い。
そっか。帰ってきてるんだ。
突然来るなんて本当に君らしい。
涙が溢れて止まらない。
傍にいることは分かっているのに、
見ることも触れることも触れられることもできない。
君はいつもそうだった。
告白しようとして何度も言い出せなかったこと、
手を繋ごうとして照れてしまったこと、
キスしようとして恥ずかしくなったこと、
全部知ってるんだからね。
やっと付き合えたのに。
結局君に触れられないままのお別れになった、
私の身にもなってほしいよ。
風が私の涙を拭うように顔を撫でた。
少しくすぐったいような、寂しいようなそんな気持ちになる。
「君との恋はほんとにもどかしいね、これまでもこれからも」