子供の頃は雨が嫌いだった
友達と外で遊べなくなるからつまらなかった
大人になった今も好きという訳では無い
頭は痛くなるし、時には憂鬱な気分にもなる
ただ何故か不思議と雨に打たれていたい気分になる時がある
自分を守る傘なんか放り捨てて
頭から足先までずぶ濡れになってしまいたくなる
このどしゃぶりの雨が、訳の分からない焦燥感や虚無感、自分への不信感、
周りへの恐怖心など全部洗い流してくれるのではないかと信じながら
今日も私は雨の中でじっと佇んでいる
私の幼なじみは最低なやつだった
幼稚園の時は大嫌いな虫を持って追いかけられた
小学生の時はスカートを捲られた
中学生の時は教科書にくだらない落書きをされた
高校生の時なんてひどかった
片思いの男の子に私の恥ずかしい過去を告げ口された
やっと大学で離れられたのに
またこうやって一緒にいる
しかも「俺と結婚してほしい」だなんて
どうせまたからかってるんでしょ?
でも仕方ないからしてあげる
昔から「愛情の裏返し」で散々いじられた分、
一緒にいていっぱい仕返ししてやるんだから
「君はいいね
私も君みたいに自由になりたいよ」
君は僕によくそう話す
「鳥のように自由に空を飛べたらいいな」
人間は鳥を自由だと言う
でも鳥にだって悩みはあるものだ
小さい鳥には大きい鳥という天敵がいるし
大きい鳥には君たち人間という天敵がいる
その悩みを話せる言葉や
これを悩みだと認識する機能がないだけで
鳥だって自由じゃない
人間のように地を歩けたら
人間のように話すことができたら
人間のように何かに怯えることなく生きられたら
君が誰かを羨ましく思うように
誰かも君を羨ましく思っている
他の人間と笑ったり泣いたり怒ったり
ふざけ合ったり喧嘩したり愛し合ったり
その気持ちを表すことができる
人間って素晴らしいじゃないか
僕も人間だったら
君にこの想いを伝えることができるのに
あー人間っていいじゃないか