大丈夫、僕がいるよ
君はそう言ってシーツに包まる私の背を撫でる
雷が怖い
お化けが怖い
大きな犬が怖い
私には怖いものがたくさんある
君はいつも根気強く付き合ってくれる
大丈夫、大丈夫
君が言うとなぜかそんな気がしてくるから不思議だ
もう少し、あと少しだけ
君の手が温かいから甘えてしまう
不意に手が止まる
包まっていたシーツから不満気な顔を出すと
ボサボサに乱れた髪を優しく整えて君は笑った
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大丈夫、僕がいるよ
そう言ってシーツに包まる君の背を撫でる
雷やお化け
大きな犬
君には怖いものがたくさんある
でも、君は知らない
僕がそんな君にどれだけ救われているのか
大丈夫、大丈夫
僕は繰り返す
震えが止まったのを見て手を止めると
不満気な君が顔を覗かせる
ごめんね、顔が見たくなったんだ
きれいだね、と空を見上げてキミが笑う
キミの瞳に浮かぶ星の方がきれいに見えた
山の上では星が綺麗に見えるらしい
誰かが言った一言で
夏休みの予定が一つ決まった
正直、この暑さで山になんて登りたくなかった
でも、誰よりも乗り気なキミに
そんなことは言えなかった
夜道は暗いし、山だから虫も多い
僕以外は誰も付き合わなかった
辿り着いた先の夜空は
確かに見たことがないくらい
星で満ちていたけれど
僕にはそこまでの感動はない
キミは夢中で空を見上げる
瞬きすらもったいないとでもいうように
目に焼き付けている
あ、星が溢れた
キミが瞳を閉じたとき
僕はそう思った
先生はいつもボクたちを叱る
使ったものを元に戻しなさい
ちゃんと目を見て話しなさい
挨拶はきちんとしなさい
人を傷つけてはいけません
嘘をついてはいけません
暴力を振るってはいけません
眉間に皺を寄せて
鋭い瞳でボクたちを見つめる
冷ややかな声で叱りつける姿は
まるで氷山みたいだ
でも、ボクは知っている
元気に遊んでいるボクたちを見るとき
先生の氷は溶けるんだ
ちゃんとごめんなさいって言えたとき
先生の声はとても温かい
先生はボクたちが大好きなんだ
風に揺れるカーテンの隙間から漏れる光
それに戯れつく子猫
午睡にはちょうどいい室温と時間
心地良い微睡みに身を任せる
ふ、と目を開ける
子猫はカーテンを被るようにして眠ってる
ぷうぷうなる鼻
ふわふわの毛並み
ぷにぷにの肉球
世界は、愛と平和でできている
キミと出会ったときに、
きっとボクは生まれたんだ
ノイズだらけの世界で、
キミの声だけはクリアに聞こえた
どこを見ても灰色だった世界も、
キミがいるだけで鮮やかに染まる
何に触れても何も感じなかったのに、
キミの柔らかさには心臓が跳ねる
生きるのに必要な補給が、
キミと一緒に味わう食事になった
花の香りなんて気にしたこともなかったのに、
キミが好きだと笑うから、
香りで季節の移り変わりに気付けるようになった
キミはもういないのに、
ボクはまだここにいる
キミはもういないのに、
季節は花の香りをまとって巡る
キミはもういないのに、
三食作るのをやめられない
キミはもういないのに、
柔らかなぬいぐるみも着心地のいい服も
捨てられずにいる
キミはもういないのに、
世界はこんなにも鮮やかで
キミはもういないから、
ボクを呼ぶ声はもう聞こえない
キミがいなくなった世界で、
ボクはキミの愛したもので生きていく
ああ、やっぱり
ボクはキミに出会ったときに生まれたんだ