甘々にすっ転べ

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12/15/2023, 12:44:00 PM

#雪を待つ

なぁ友よ
あんたは常に真摯であり続ける、という努力を怠らない。

あんたは
誰もが棘付き薔薇を
ただ棘付きだから気を付けてね、と渡す所を

あんたは
棘を全部取り払って尚。
棘が付いてるかもしれないから気を付けてね、と言う。

お人好し。

「今日はご機嫌斜めなんだ?」

「うん。」

「皆が目を見合わせて驚いてたよ。今日のあんたは冷たいって。」

「うん。ごめん。」

この人間大好きなお人好しは
ほんの一握り以外の人間を時々放り出す時がある。

誰にも構ってやってるヒマはねぇ、って感じでね。

「どうしたんさ?」

「ううん。」

口が硬い友人だな。

「雪だるま作ろう〜」

「雪が降ったらね。」

おや、本当に今日は冷たい。
困ったね、と溜め息を溢すと彼女がつられて息を吐いた。

「人間なんてみんな、大っ嫌い。」

「へぇ?あんたが?」

「自分勝手で、すぐに八つ当たりする、喜んで被害者面をしてバクバク他人の不幸を食べて指差して笑う。ーー今日は私が笑われた。」

「あらま。」

「私は被害者じゃないっ、私はたまたま今日アンラッキーだっただけで、不幸じゃない。指差して笑われる意味が分からない... ...っ、」

なんて言葉を掛けるべきだろうか。
悩んで結局、何時もと同じ事を言うしかなかった。

「「距離を取りなさい。」」

何からでも良いんだ。
そんな記憶から距離を取っても良いし、
そんな人間からも距離を取っても良い。

あんたは孤独じゃない。

「雪が降ったらもう一回、歌ってくれる?」

「うん?」

「私も雪だるま作る。」

「良いね。」





12/14/2023, 12:22:37 PM

#イルミネーション

心地良い重さの
同じ名前の絵の具を絞り出して固めた様な
紡錘形の果物で
爆弾騒ぎを起こす犯人

という妄想をした人を思い出す。

私も
ここ暫く続いていた憂鬱を晴らしたくて、少し緩やかに帰路を歩いていた。

「そうだ。」

目の前のやけに眩しい目障りと言えなくも無い電飾
私も普段なら素直な気持ちで綺麗だと言えた。

けれどここ暫くの私は違う。
そしてたった今から
私はどうにも込み上げる思いを堪えきれないでいる。

私も。

私も同じ妄想に取り憑かれる。

私も。
あの美しいイルミネーションに。

ひとつだけ妙にズレた奴があった。
私はそれを元有った様な空気感で置き直す。

この時、私は極々小さな
そうだな。百均の胡桃ボタンを忍ばせる。

「ふ、ふふっ。」

分かってる。
これは妄想。

現実では只、綺麗な電飾に手を触れただけの女。

けれど今
私の心は高揚している。
憂鬱は風と共にさっと吹き飛んだ。

「胡桃ボタンか。」


我ながら良いセンスだ。



12/13/2023, 2:42:07 PM

#愛を注いで

例え誰が読まずとも
例え言葉が足らずとも
誰より才の無さに咽いでも

私だけは
私が溢す言葉を愛している。

もし瓶にたくさん言葉を詰められたなら
それは
何より大切な宝物にならないか?

12/12/2023, 3:38:04 PM

#心と心


何時が良いのかな。
人前で手を繋ぐ事すら勇気が出ない。

けど、触りたい。

「あ。」

「なに?」

「前髪、跳ねてる」

「えっ!?」

「触って良い?なおして、あげる。」

照れてる。
可愛い。
髪、柔らかい。

女の子ってなんでこんな、髪まで柔らかい訳。

「ついでに頭も撫でて良いよ。」

「えっ!?」

「へへっ、良いよ。」



12/11/2023, 12:03:06 PM

#何でもないフリ

「痛っ」

会社で転んだ。

すてんっ

幸い誰も見てなかったのに
立ち上がった時には人が現れた

笑い話にも消化されない
ただ無意味に
セーターにぽこっと穴を開けられた気分

こんなこと。
泣く理由にはならない
だってどこも怪我してない

ただ

すてんっ

と転んだだけ。

「おぉ、おかえり。偶然だな。」

ハッと顔を上げたら恋人が玄関の鍵を開けた所だった。

「どした、腹減った?」

首を振る。
何でもないフリくらい私にも出来る。

「そう?」

「ご飯、つくる。」

「今日鍋だろ?」

「うん。」

靴を脱ぐ。
コートも脱いで、身体が軽くなった。

「その前に、何か忘れてない?」

「え、鍵かけたよ」

「おかえり。」

もう一回、今度は目を合わせて言ってくる。

「おかえり。」

あぁ、いいや。
尻もちなんてどうでも良い。

私が帰って来て嬉しそうに、おかえりって言うひとがいるのに、尻もち?

「ただいまっ」

「おぉ、元気になったな。」

「へへっ。」

「ほら、鍋の用意するぞ。」

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