#イルミネーション
心地良い重さの
同じ名前の絵の具を絞り出して固めた様な
紡錘形の果物で
爆弾騒ぎを起こす犯人
という妄想をした人を思い出す。
私も
ここ暫く続いていた憂鬱を晴らしたくて、少し緩やかに帰路を歩いていた。
「そうだ。」
目の前のやけに眩しい目障りと言えなくも無い電飾
私も普段なら素直な気持ちで綺麗だと言えた。
けれどここ暫くの私は違う。
そしてたった今から
私はどうにも込み上げる思いを堪えきれないでいる。
私も。
私も同じ妄想に取り憑かれる。
私も。
あの美しいイルミネーションに。
ひとつだけ妙にズレた奴があった。
私はそれを元有った様な空気感で置き直す。
この時、私は極々小さな
そうだな。百均の胡桃ボタンを忍ばせる。
「ふ、ふふっ。」
分かってる。
これは妄想。
現実では只、綺麗な電飾に手を触れただけの女。
けれど今
私の心は高揚している。
憂鬱は風と共にさっと吹き飛んだ。
「胡桃ボタンか。」
我ながら良いセンスだ。
12/14/2023, 12:22:37 PM