甘々にすっ転べ

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12/14/2023, 12:22:37 PM

#イルミネーション

心地良い重さの
同じ名前の絵の具を絞り出して固めた様な
紡錘形の果物で
爆弾騒ぎを起こす犯人

という妄想をした人を思い出す。

私も
ここ暫く続いていた憂鬱を晴らしたくて、少し緩やかに帰路を歩いていた。

「そうだ。」

目の前のやけに眩しい目障りと言えなくも無い電飾
私も普段なら素直な気持ちで綺麗だと言えた。

けれどここ暫くの私は違う。
そしてたった今から
私はどうにも込み上げる思いを堪えきれないでいる。

私も。

私も同じ妄想に取り憑かれる。

私も。
あの美しいイルミネーションに。

ひとつだけ妙にズレた奴があった。
私はそれを元有った様な空気感で置き直す。

この時、私は極々小さな
そうだな。百均の胡桃ボタンを忍ばせる。

「ふ、ふふっ。」

分かってる。
これは妄想。

現実では只、綺麗な電飾に手を触れただけの女。

けれど今
私の心は高揚している。
憂鬱は風と共にさっと吹き飛んだ。

「胡桃ボタンか。」


我ながら良いセンスだ。



12/13/2023, 2:42:07 PM

#愛を注いで

例え誰が読まずとも
例え言葉が足らずとも
誰より才の無さに咽いでも

私だけは
私が溢す言葉を愛している。

もし瓶にたくさん言葉を詰められたなら
それは
何より大切な宝物にならないか?

12/12/2023, 3:38:04 PM

#心と心


何時が良いのかな。
人前で手を繋ぐ事すら勇気が出ない。

けど、触りたい。

「あ。」

「なに?」

「前髪、跳ねてる」

「えっ!?」

「触って良い?なおして、あげる。」

照れてる。
可愛い。
髪、柔らかい。

女の子ってなんでこんな、髪まで柔らかい訳。

「ついでに頭も撫でて良いよ。」

「えっ!?」

「へへっ、良いよ。」



12/11/2023, 12:03:06 PM

#何でもないフリ

「痛っ」

会社で転んだ。

すてんっ

幸い誰も見てなかったのに
立ち上がった時には人が現れた

笑い話にも消化されない
ただ無意味に
セーターにぽこっと穴を開けられた気分

こんなこと。
泣く理由にはならない
だってどこも怪我してない

ただ

すてんっ

と転んだだけ。

「おぉ、おかえり。偶然だな。」

ハッと顔を上げたら恋人が玄関の鍵を開けた所だった。

「どした、腹減った?」

首を振る。
何でもないフリくらい私にも出来る。

「そう?」

「ご飯、つくる。」

「今日鍋だろ?」

「うん。」

靴を脱ぐ。
コートも脱いで、身体が軽くなった。

「その前に、何か忘れてない?」

「え、鍵かけたよ」

「おかえり。」

もう一回、今度は目を合わせて言ってくる。

「おかえり。」

あぁ、いいや。
尻もちなんてどうでも良い。

私が帰って来て嬉しそうに、おかえりって言うひとがいるのに、尻もち?

「ただいまっ」

「おぉ、元気になったな。」

「へへっ。」

「ほら、鍋の用意するぞ。」

12/11/2023, 5:04:39 AM

#仲間

なぁ何処へ行ったんだ
此処は。嗚呼、

「そうか。」


なぁ吾が盟友よ。
妻より先に死んではならぬという約束は守れそうかい

なぁ吾が親友よ。
聞いておくれ。孫が目に入れても痛くねぇんだ

おいこら悪友よ。
お前の六文銭は俺が払ってやるから
これ以上碌でも無い悪さはするなよ

なぁ吾が戦友よ。

ーー・・・俺たちはよくやったと思わないか
よくやった、やり遂げたとたまには褒めてやれ

「嗚呼居た居た。おーいこっちだよぉ!」

それから吾が朋友達よ。
お前達の半分は
こうしてしがない俺を迎えに来てくれた。

残り半分、お前らがくたばったら俺が川向こうから手ェ振ってやるよぉ。
そしたら迷子になるまいよ。

だから。
安心して長生きせぇ。

「お前、馬鹿な奴だなぁ。女房置いて来ちまったのか?」

「良いんだよ。あいつはこれからやっと、手前の人生たっぷり楽しむんだからよ。」

「へぇ、何するんだい。」

「ゆーちゅー婆ぁとか言うとったなぁ。」

「へぇっ、何だいそりゃ楽しそうだ。」

「小さい孫も犬も鶏もおるからな。」

「相変わらず働き者だねぇ。」

「習い事もたんまりさ。」

「それより、どっちが早く走れるか競走しようぜ。」

「おうよ!」


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