【誰も知らないひみつ】
さがしている人にしか見つけられないものがある
【かくされた手紙】
今でも覚えている
6年生のとき、卒業が見えてきたこの時期に
親友が私立中学にいくことがわかった
ホームルームに担任から告げられた
私立を受験するなんて珍しいと言われる田舎だった
休み時間、私は彼女のもとへ行き
「聞いてないよぉ」と言った
「言ってないもん」と彼女はにっこりと笑った
言葉がでなかった
その笑顔の意味するものが
わかったような、わからなかったような、
わかりたくなかったような
そんな気持ちだった
どうやら彼女が私のことをうとましく感じていたらしいと後になって知った
共通の友人から聞かされた
その子は私に腕を組もうとした
する、と私はその腕を抜いた
嫌われてたんだ 知らなかった
恥ずかしい、間抜けに見えてただろうな
私もきらいって言っておけばよかった
だけど楽しそうだったのにな
うそって、あんなふうにつくものなんだな
そんな気持ちだった
なんか、…つまんないの
今なら、あの子の笑顔にたくさんの
ひとことでは言い表せない思いが詰まっていたことがわかる
ほんとうに、ここには書けないほどの思いが
言いたいことを黙っていられるとか、
なんでも冷静に受けながせるとか、
美味しい店をたくさん知ってるとか
大人ってそういうことじゃないって思うのよ
経験と時間は、エスカレーターみたいに
ひとを大人のステージに連れていくけど
大人ってそういうことじゃないって思う
違ったらごめん、
そのときは自分で、手紙を探して
【日陰】
このことばを見ると、ある理由から小学生の時の担任を思い出す。
物事にはいくつもの側面があるということと、
教師も未熟なひとりの人間であるということを教えてくれた。
その人のことはあまりうまく処理できていないから、まぁいったん置いておこう。
いったん置いて、もう30年は経った。
今は地元で校長をしているらしい。
その学校に娘を通わせることになった幼馴染が教えてくれた。
あーー、へぇーー、そうなんや。
【帽子かぶって】
つま先ちかくに落ちた葉っぱのかけらが
ゆらゆらと揺れている気がしてじっと見る
小人でもいるのかとまじまじ観察する
たしかに揺れているそれを、そっとつまみ上げる
電気ストーブのあたたかな空気の動きに
葉っぱはゆらゆらゆれる
形あるものに落とし込んでいくという作業に
これほど助けられたことはない
ふさわしい言葉を探って文字にしていくと
研ぎ澄まされて冷静さをとりもどす
距離をとって眺め、外郭を把握できたなら、
それに振り回されることはないのだから
あたらしい自分、なんて聞き慣れた言葉に
ハッとさせられるのはまだ先のこと
【わぁ!】
言うんじゃなかった、あんなこと
口から出た言葉はもう取り返せないのに
あんなこと、言うんじゃなかった
思い出して頭を抱える
自分の稚拙さに嫌気がさす
なんて幼いんだろう
なんて馬鹿なんだろう
わぁ!!
そんな夜