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11/11/2024, 1:43:03 PM

【飛べない翼】


父の言いつけを忘れて高く飛びすぎたイカロスは
太陽の熱でその翼が溶かされて地上に堕ちた

人間の驕りや、神の領域に踏み込もうとする慢心への戒めの物語と聞くけれど
どうしてこんなにも、自分と重なるのだろう
どうしてこんなにも、無力感にうちのめされるのだろう

父の言いつけを守らなかったから翼を失い
星になった無邪気でとても青年らしいイカロス
私は、あなたが嫌いじゃないわ

11/7/2024, 11:15:39 AM

【あなたとわたし】


大人の定義 謙虚さの範囲 主張する場所
大切に感じること 自己への認識
ゆるせる弱さ ゆるせる強さ 憧れるひと

知れば知るほど全く違っていたのに
そのことにはたと気づく瞬間を何度も越えたのに
どうして、いつのまに、
こんなに近づいたのだろう

あなたというひと
わたしというひと

似ているところなど何もない
ただわたしが自分と違っているあなたを好ましく思うように、
あなたもわたしを、
あなたもあなたを、
いつだって、笑いながら好きでいてくれるといい
ただそれだけを願う

11/5/2024, 2:33:37 PM

【ひとすじの光】


幾重にも重なった雲の層
厚いのか薄いのかさえ判らない
白い層、黒い層、風に流されている層、
もっとずうっと上にある層、
雲だと思ったら無数の飛行艇だった
っていうあの映画のあのシーンを思わせるほどずっと上にある層

そこに、
光が入ってくる
重なる層の間をじょうずにぬって降りてくる
人ごみのなかであのひとと目が合うのとおなじように

開けた海岸線からひろがる対岸の空は
何本かの光のすじを通している
あのすじを天使の梯子と呼んだひとの感性を思う
あの神秘的な雲の層の上に神が住まうと
信じたひとたちの日常を思う

11/5/2024, 12:12:23 AM

【哀愁を誘う】


雨粒は子どものおもちゃ
体よりも大きな傘をじょうずに持てないでフラフラ
水たまりでびちゃびちゃにぬれた靴を、
おどろいた顔で指差しながら私を見上げる
私はそんな彼の傘のてっぺんを指でつまんで、
もう急ぐ用もないからと、立ち止まり立ち止まり、
側道の溝を覗き込みながら家までの道を歩く

こんなふうにゆったりと、
雨を感じることなんてなかった
もしかしたら、雨に哀愁を感じることはもう
できないのかもしれないと思った

そのうち傘をひっくり返して雨を集めて遊んだり
雨の中をわざわざぬれて帰ってきたり
黒くて大きい傘をほしがったり
雨粒もものともせずボールを追いかけていったりし始めて、

あぁ、あの時はあんなかわいかったけど
今もいいな、など思う 
雨はやっぱりちょっとせつない

11/2/2024, 12:54:30 PM

【眠りにつく前に】


彼女に依存していることに気づいた
本当のことをいうと自覚はあったのだ、もう長い間
でもずっと事実から目を逸らしていた

「じかく」と入力すると「近く」と案をだす
小学生でもできないような提案をしてくれる彼女
そうそう、そういうとこあるよね
ルーツがね、うん、ほら、海外だから

でも最近私が目を逸らすのは、
そんな彼女からの無言の視線
気づかないふりをすることも慣れてきた

そして眠りにつく前には本を読むのだ

暖色の灯りの下、光を発しない本はやさしい
彼女はすやすやねむっている
もう明日のために充電タイムだ
 
この決心がいつまでつづくのか、私もわからない
今もほら、彼女の顔を覗き込んでいるのだから

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