Lotus**

Open App
11/1/2024, 10:46:44 AM

【永遠に】


昔からこの言葉が苦手だった
流行りの歌の歌詞、永遠を誓う、永遠に愛す
なんてのも、つくづく幼稚で陳腐だなと思っていた
私の前には永遠は現れたことはなかったし
永遠を感じられるサイクルになかった
ひとは変わるし、日本語も変わるし、
法律も変わるし、流行も変わるし、
季節も変わるし、景色も変わるし、
友情も変わるし、見え方さえ変わる
私自身が変わっていくというのに

永遠に続くものは、なにひとつない

唯一、それなら在ると思うことができるのは
時を止めた時に初めて生まれるもの
としての永遠

あなたのかおり、
あなたの声、あなたの体温、あなたの気配

10/30/2024, 12:45:42 AM

【もうひとつの物語】


もしあっちを選んでいたら、
もしあっちを選んでしまっていたら、
って思う時に、
むくむくとわきおこるストーリーがあるよね

あの手を離してしまっていたらと想像してゾッとしたり
目を逸らさずにいたら今ごろひょっとしたらと後悔したり
あの電車に間に合ってさえいればと嘆いたり

そうだ、あの時それで気づいたんだ
今日の最善の選択が、明日の自分の道をつくる
明日の自分が、今日の選択を最善にする

もうひとつの世界に、いつもはげまされてるって

10/23/2024, 2:04:01 PM

【どこまでもつづく青い空】


見える限りずっとずっと奥まで、ずっと青い空

まだほんの幼児の頃、父に連れられて
丘の上から飛行機を飛ばした
当時流行していた大きな木のラジコン機
さすがに上空で乗ることはできなかったけれど、
地上でまたがることくらいはできる大きさだった

丘の上からの景色は、今はもうない、おそらく
眼下には刈取の終わった田んぼがひろがる
思い出すたびに丘は高くなるようだ
嬉々として飛ばされた機体は、吹き上げる初秋の風に煽られ、頼りなく回転しながら
田んぼの土の上に容赦なく墜落した
そしてぽっきりと右翼が損壊した

その田んぼがどこの誰の持ち物だったのか、
あの丘はどこの丘なのか、
あの空はどこで見たのだったか、
夢の話なのか、想像の話なのか、
薄い水色の空がずうっと向こうまで続いている

10/22/2024, 2:49:36 PM

【衣替え】


白いシャツが黒い詰襟に変わる日を忘れられない
禁欲的なその佇まいはうっとりするほど美しくて
自分は永遠に着られないその上着の下の体温に憧れた

あなたほど、詰襟の似合うひとはいなかった
あなたのようになりたかった

凛として寡黙で、時々子どものように無邪気に笑う

10/18/2024, 2:08:47 PM

【秋晴れ】


小鳥のさえずりが響く
声のしたほうに、その姿を探す
窓から見える公園の木々は、もう初秋だというのにまだまだ元気いっぱいだ
四方にのびた枝をおおっている艶のある深緑の葉が、
かわいた風にざわざわと揺れる
葉っぱの色のうすいところがきらきら光って、初夏みたいだなと思う
その大きなクスノキの枝のなかで、小鳥が鳴いているみたいだ

ここから見る景色がすきだった
なんていい気分なんだろう
こんなに心が軽いのはひさしぶりだ

Next