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【哀愁を誘う】


雨粒は子どものおもちゃ
体よりも大きな傘をじょうずに持てないでフラフラ
水たまりでびちゃびちゃにぬれた靴を、
おどろいた顔で指差しながら私を見上げる
私はそんな彼の傘のてっぺんを指でつまんで、
もう急ぐ用もないからと、立ち止まり立ち止まり、
側道の溝を覗き込みながら家までの道を歩く

こんなふうにゆったりと、
雨を感じることなんてなかった
もしかしたら、雨に哀愁を感じることはもう
できないのかもしれないと思った

そのうち傘をひっくり返して雨を集めて遊んだり
雨の中をわざわざぬれて帰ってきたり
黒くて大きい傘をほしがったり
雨粒もものともせずボールを追いかけていったりし始めて、

あぁ、あの時はあんなかわいかったけど
今もいいな、など思う 
雨はやっぱりちょっとせつない

11/5/2024, 12:12:23 AM