Lotus**

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9/8/2024, 12:15:43 PM

【胸の鼓動】


…なんだろう?あの水筒は…
夜、通り道のマンションの前にたたずむ救急車。エンジンはかかっているが、ふしぎなほど静かだ。野次馬はいない。音と赤色灯に集まってきていた人々が散ってから、おそらくずいぶん時間が経ったようだ。住宅街の暗闇に、不気味なほど冷静に停まっている。
そのすぐ後方の道路に、小学生の水筒が、とん、と立ててあるのを見つけたので、ふと立ち止まったのだ。
コンクリートの上、白線のちかくに置かれることのあまりない物だ。気になって、ふらりと寄る。近づくにつれ、てっぺんにお名前シールが貼ってあるのが見えてくる。立ったままで覗き込む。
「え?」
知っている子どもの名前が、ひらがなで読み取れた。
コンクリートの道路にしゃがんで、なんども読み直す。まちがいない。友人の息子の名前だ。
「え?」
思わず救急車を見あげる。人の気配のない救急車の後ろ姿。機械音ともエンジン音ともつかない響きと、暗闇の中でただひかり続ける赤色灯。
…だめだ、これは、よくない。よくない気がする。
その友人に電話をかけようとゆっくりとスマホをとりだす。
名前、なまえ、なんだっけ、電話番号知ってたっけ、あ、アプリから、アプリの登録名は…
おちつけ、おちつけ、と自分に言い聞かせる。
「どうしたの?!」友人のおどろいた声。
「ひさしぶり。ねぇ、息子くん、どうしてる?」
なるべく平静を装って話す。
「え、息子?息子はいま家にいるよ」困惑した声。
「あ、あ、ほんと…?」
とりあえず呼吸を整えた。
「今、道端で息子くんの水筒拾ったから」
「え?!なん、え、ちょっと待って、聞いてみる」
「…」
「水筒どこやったか聞いたら『わからない』って」
「そんなことある?」と笑えてくる。
「そのあたりに行ったのは間違いないみたい、でも水筒置いてきてるなんて、しかも道端」友人の声は、信じられないという風に憤慨している。
私は笑っている。

水筒を、たまたま道路にただ置いて、そのまま忘れて帰ってきて、救急車がそのすぐそばに停まっているのを母親の友人が見つける、なんてことが、子どもの世界には時々起きる。
時々ではなく、しょっちゅう起こるお宅もある。
事実は小説よりも奇なり、はまさにすぐ隣にある。

血圧下がったわ

9/7/2024, 11:06:32 AM

【踊るように】


衣裳場の娘が、劇場の舞台に憧れながら歌う歌がある。彼女は修繕に出されてきたドレスを胸に抱きながら、独り言のように歌い、躍り、無邪気な妖精の鱗粉のように光を散らす。

踊るように生きたい。
あの妖精みたいに。

9/6/2024, 12:17:19 AM

【貝殻】


子どもの頃、よく砂浜で貝殻をあつめた。波のかたちに線になって貝殻が打ち上げられているところを見つけたら、自分好みの貝殻を探すのに夢中になった。
私は薄紅色の二枚貝がいちばんすきだった。白ければ巻貝も好きだった。大きいものはめったになくて、ほとんどが小さい。ハンカチに包まれて、あるいはポケットに放り込まれて、自宅に連れて行かれたそれらは、しばらくは学習机のひきだしに入れられていたけど、いつのまにかどこかへ消えてしまった。成長の過程で私に処分されたのだろう。
浜辺のあのさらさらの砂が、ぜんぶ貝のちいさな粒だったらいいな。
公園の砂場に這いつくばっているときに、ふと貝殻を見つけると、あ!と思う。
きらっとした何か、ちいさな何か、貝殻以上の存在感のあるそれ。

9/3/2024, 11:25:19 PM

【些細なことでも】


最近得た確信、とても些細なことだ

選ぶ言葉ってそのひとの立つ位置や所属する共同体、その集団がもつ潜在的な価値観みたいなものを指し示す座標みたいなものだ

今朝「界隈」が若者のあいだで流行っていると情報番組で放送していた
使うことによって共通意識が芽生えたり、その言葉だけで通じるものが多くなったりするそうだ
みんなお互いに自分と同じっぽいひとたちと仲間でいたいんだな、引き込んだり、引き込まれたりしながら

逆に考えると、その言葉を使っているというだけで周囲からは「その集団のもつ象徴的な価値観」を体現しているように見える、ということでもあるよね

日々触れるいくつかの共同体の価値観、それに裏づけされた言葉のチョイス
ここですこしリセットする機会をもらっているのは、とてもありがたいことです

8/31/2024, 2:48:50 PM

【不完全な僕】


私はあきらめない
今日は昨日の結果で、昨日はおとといの結果なんだ

今日が明日をつくる
今日が昨日を肯定する
自分を愛すること、信じること、

今日の自分を愛せたら、昨日の自分を肯定できる
今日の自分を許せたら、昨日の自分をほめられる
そうやって自分を愛することを学んでいく

ほら、私たちはみんな階段の途中、
みんな不完全だ

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