【だから、一人でいたい】
「ひとりでいる子はモテる」
「大人になったらみんなぼっちやで」
「孤独とのつきあいかたを身につけるのは大切だと思います」
「ひとりで旅行してると、淋しくなりそうで勇気がない」
「自分だけの時間がないと、息がつまって」
「傷ついたらどん底に落としてくれる歌をきくわ 励ましの歌なんてきく気にもならない」
「自分のペースで飲むの、最高ですよ」
「休みの日に誰もいない校舎の中庭で本を読んでると、変なやつと思われそうだけど集中えぐくてくせになる」
「ひとりのときは、自分」
覚えてる「ひとりでいたい」
【澄んだ瞳】
みんな彼女を好きだった
くるくるの髪の毛、白い肌、自然な眉、
小ぶりな鼻、ふさふさのまつ毛
かなしいと泣き、うれしいとよく笑い、
甘えんぼうで、可憐で、女の子らしくて、
ほどよく賢く、ほどよく天然で、
漫画の主人公のような強さも持っていた
ウエストが細くて、お婆さまはもと舞台人だった
黒目がちなその澄んだまなざしで
無自覚にひとを魅了し、心を許させてしまう
「嫌ってはいけない子」
澄んだ瞳で、彼女は線をひく
あなたは、こっちね
わたしとあの子とあの子たちは、こっち
だってあなたは特別なんだから
澄んだ瞳で、彼女は選んでいく
花一匁みたいに、「そうじゃない」ひとを
ちゃあんと見定めて、優しくハンコを押していく
こわいこわい
澄んだ瞳には近づいちゃいけない
【鳥かご】
うちにはうさぎがいる
昼間はゲージのなかでノンビリ寛ぎ、夜になると部屋に放たれてとびまわる
ふわふわのラビットファー、大きな鼻、そろった前歯、肉球のない手足、長い耳、ほんのりあたたかいその体温、おやつの時の爛々と真っ黒になる瞳
かわいくて仕方ないのだが、いかんせん無口なのと
表情がわりと一定なのとで、自分が信頼されているのかどうかいまいち自信が持てない(残念である)
でもひとつのことには自信がある
この子は、「野に放ったらもう二度と帰ってこない」ということ
何かの拍子に公園にでも連れて行き、何かの拍子にパニックになって、何かの拍子にハーネスから脱出してしまったら、もう永遠におうちに連れて帰ってあげることはできない
それどころかおそらく、二度と姿を見ることもできないだろう なぜなら駿足すぎるから
家族全員、公園に連れて行こうと思ったことも、ハーネスをつけようと思ったこともない
ゲージって、おうちって、そういうものなのだ
鳥かごという言葉には、もうすでに別の意味が含まれている
言葉が熟語的に持つ別の意味にひっぱられないように、客観的に使いたい
【花咲いて】
3年あれば人生は変わる
まわりにいるひとたちすべてが変わる
流れに逆らったり、留まったりできるひとなんていないのだから、そりゃあもう、大蛇がうねるようにして大きく世界が変わる
私も今、新しい世界に渡る段階だ
そしてふと頭にうかぶのは
「もうふりかえらない」とか「前だけを見つめて」とか歌詞でよく見かけるけどまさにそれ、その一文
クサいわぁなんて思っていたけど、まさにそうとしか言えない
ありきたりな歌詞も、何度もくり返されるには意味があるということか
毎日頭のてっぺんに小さな花を咲かせて、ご機嫌でいこう
脳内お花畑なんて皮肉を地で行くのも悪くないじゃないか、誰に迷惑かけるでもなし
自分にとっての明るいほうへ、
光をさがして飛ぶ羽虫のように、光に向かってのびる雑草のように
【もしもタイムマシンがあったなら】
先のことわかってしまうとつまらないから、
もどりたいかな。
実は、30年くらい前からやりなおしたい。
ずっと思ってる。
口にするとなんかの拍子に本当になりそうで怖いから言わなかったけど、
白状する。
あの恋も、あの迷いも、あの後悔も、あの光も、
あの友情も、あの涙も、あの孤独も、あの焦燥も、
ぜーんぶちゃんとクリアしてきたい。
それからきちんと歩きなおしたい。
そういうことをゆっくりしっかり考えてから、
大きく越えていきたい。
その結果が今のようにならないならそれは仕方ない。
出会うべき人とは出会う、そう思うから怖くない。
中途半端にのこってるから、いつまでも囚われるんだ。
白状する。
もしもタイムマシンがあったなら、30年前、
まだ携帯もスマホもなかった時代へ。