ねむ

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5/27/2023, 10:15:10 AM

「人類がまだ月に行けなかったほどの遠い古の話だが」
「ああ」
「月には兎や蟹や鰐などの生き物と、若い女性や老婆、あとは月の女神が住んでいると考えられていたらしい
「楽園か何かと思ってたんだろうか」
「なんにも住んではいなかったのにな」
「だな。そこに初めて住んだのは結局人類で、」
「今や何者も住んではいない……」
「あるのは廃墟と、過去の亡霊たちくらいだな」
「あとはおれたちのような、」
「亡霊のなりそこない」
「……虚しいものだな」
「"賑やかな亡霊"もいるから、しんみりはしないかもな」
「いいや、あれは"騒がしい"。被害をもたらすからな」
「はいはい、冗談言ってる場合じゃないってね」
「笑えないがな」
「すんませんね。まぁ、今日もちゃっちゃとやりましょっかねぇ」
「ああ。……そうだな、古の月の女神にでも祈ってから行くか」
「いいねそれ」
「"一日も早く、亡霊が鎮まりますよう"」
「"一日も早く、昔みたいに笑える場所になりますよう"」


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月に願いを

5/17/2023, 9:24:46 AM

「わたしを愛しているというのなら、今すぐここで自害してみせなさい」


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愛があれば何でもできる?

5/15/2023, 9:51:38 AM

生まれ変わったら、蒲公英の綿毛になりたいな。
そして、流れ者として、あちこちを旅するのだ。
良い土地があれば、そこに落ち着いてもいいだろう。
そんな素晴らしい期待と希望で胸を膨らませ、わたしは今、飛び立った。
ああ、風が気持ち良い。


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風に身をまかせ

5/13/2023, 1:13:51 AM

「うちの子かわいい!このまま大きくならないでほしいなぁ〜」

……なんて、幼子に対して、冗談でも言ってはいけません。
何故ならその子はあなたの期待に応えようと、成長を止めてしまうからです。
体はいやでも大人になりますが、その子の心は。
心はきっと、二度と大人になることは無い。

子供は純真。純粋。素直。無垢。あなたの全てをそのままに受け取る。
"言霊"という言葉もあるのです、どうか、どうかその口に出す言葉は、よくよく考えたものにしてくださいますよう。


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子供のままで

5/10/2023, 1:33:34 AM

「行ってきます」
きみはそう言って、わたしに手を振る。
わたしは手を振り返して、答えた。
「行ってらっしゃい」
いつもの風景。
けれど、なんだろう。なにか引っかかる。
きみを、行かせてはいけないと。なぜかそう考えている。
きみを引き留めようと、手を伸ば——せない。体が動かない。
どうして、声も出ない。きみを、なんだか、止めなくっちゃあいけないのに。
なんで、なんで、これじゃあきみを、



「っ!! 、……」
夢。古い記憶が元の、夢。
それを理解して、深く、深く、溜息をつく。
あの日から——きみが帰って来なかった、あの日から。
「……一体、何十年経ってると思ってるんだか」


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忘れられない、いつまでも。

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