ねむ

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4/5/2023, 11:58:25 AM

晴天の日、太陽は眠りに就き、代わりに巨大な鏡が金色の薄明りを齎す。
そこに無数の光の砂粒が、大小様々な絵画を描く。
……それをじっくり鑑賞していれば、聞きなれた声。
「今夜も見ているのか」
やはり見知った人だった。
「もちろん」
「よく飽きないな」
「飽きるはずもないよ」
「そうかい」
そいつは傍まで歩いて来て、言葉を続けた。
「やはり宙には行かないのか」
「行かないね」
「今きみが見ているものが、もっと近くで見られるんだぞ」
「そうだね」
「・・・・・・あの人だって、見つけられるかもしれない」
はた、と。気付き。
確かに、宙にいるあの人を——あの砂粒達の、どこかにいる筈の——
——ああ、けど、やはり。
「いや、いい」
「何故?」
単純な事。
「わたしは、ここから見る景色が好きなんだ」


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星空の下で

4/5/2023, 9:42:59 AM

社会の喧騒から離れた、自然豊かな地。
そこにひっそりと佇む、冷たい石塔。
恩師の眠る場所。
静かなそれへ、わたしは祈りを捧げた。
もう、この人がいなくなってから幾許か……必死に日々を過ごし、生き延び、気が付けばこんなに時間が経ってしまっていた。
あなたの導きを受けなくなってから、それ程の時間が経っている——
「——わたしはまだ、まっすぐ歩けているだろうか」
そよ風が、わたしの頭を撫でて行った。
仄かに暖かかった気がした。


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それでいい

4/2/2023, 4:03:00 PM

幼き日より好んでいた作曲家の、新曲がもう二度と聴けないのだと分かった時。
その言葉にし難い、悲嘆の心。
生きてゆく上で、避けること叶わないもの。

その痛みは、わたしがまだ死んでいない証だ。


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大切なもの

4/1/2023, 10:05:25 AM

「お前のこと興味無いんだわ」
「こっちこそおめーに興味なんかねーわ」


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エイプリルフール

3/30/2023, 5:13:28 PM

花を一輪、買った。
バラの花。贈り物用のラッピングも、してもらって。
ただ、渡すだけだ。別に想いを伝えるわけじゃあない。
渡すべきその人とよく会う場所で、……ああ、会えた。
その人に声を掛ける。さも偶然会ったように、そして……
「余りなんだ、一つあげる」
花を差し出す。
その人は特に表情を変えることなく、無機質な感謝の言葉を述べて、花を受け取った。
受け取ってもらえたので、自分は別れの挨拶をして、その場を去った。
目的は達成した。
あとはただ、帰るだけだ。

…………

「……バカな人。
 耳真っ赤にして、"偶然"だなんて嘘ついて。
 ……本当、バカで……可愛い」


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何気ないふり

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