ふとした事で思い出す。
酷く懐かしい、優しい色。
社会人になってそこそこ経ったはずなのに、色褪せない学生の色。
教室を照り付ける陽気に、響く笑い声。
ノートに書かれた落書きに、偉人に書いた落書き。
それを見て笑う、友人に、私。
帰りたいと思った。
私は、大人になんてなりたくなかった。
ずっと、穏やかで、好きな人と飽きるほど居られるあの日々が、居心地が良かった。
でもそれは、当たり前に過ぎないことで。
その日々はあの頃にとっての、当たり前で。
当たり前を失ってから気づく。
足元の土がとても大切なことに感謝しないように、私もまた、ごく当たり前の日々に感謝をしなかった。
このことを酷く後悔している。
月に密やかに願う私は、臆病。
好奇心でつき歩いてきた私は、形を成そうとする好奇心のその先に、何があるのか分からず歩みを停めてしまっていたんです。
明日には、明後日にはと、緩い口約束をして、もう立ち止まってる足は痛くて、もう立っていられないんです。
いっその事、歩いてしまえたら楽なんです。
でも、私は臆病が故に、自分から一歩踏み出すより、人に背中を押されて、あたかも一歩が出てしまった。そう思いたいのです。
仕方ないことだと。そう思いたいだけです。
月に秘密裡に願う私は、人任せ。
いつかのあの頃になる私へ。
今、未知の世界に飛び込もうと意気込む。
否、未知の世界は怖いと知り窄む。
更、未知に触れられず二の足を踏む。
いつか、今現在を、あの頃と言う私は、この未知を乗り越えていますか。
私は、私たちは恐れているだけなんです。
先が見えないことに。
私たちは、もう逃げられない。
幸せからは逃げることが出来ても、辛さからは逃げられない。
どうしようもないほどに。
産まれたからには、逃げることが許されない。
空想に逃げれることが出来ても、現実からは逃げられない。
挙句の果てに。
私たちは、生を受けたその日から逃げられない。
こういう決まり、かのように。
「またね」「また明日ね」「また連絡するね」
別れの言葉と、また次会える口実作り。
「また次も会いたい」って、大きな意思。