『優しさ』
プロローグ
優しさなんて要らなかった。こんな中途半端なものを得るくらいならば、一人でいる方が何倍もマシだ。
私はお前のような嘘つきは嫌いだ。
置いてかないって言ったのは何だったんだよ。私はお前だけは信じていたのに。
これは、1人の少女が本当の優しさを知るまでの物語。
『不安と緊張』
人生で初めて好きになった人とのデート。こんなに緊張するとは思っていなかった。
いつもは気にしない服にメイク。鏡の中の人と何度もにらめっこしてやっと決まったと思ったのに、今度は髪型が気に食わないらしい。
応援している私がこんなに緊張しているのだから当事者の娘はどれだけ緊張していることだろう。
お母さんはずっと、あなたの事を応援しているからね。
ほら、笑顔笑顔!
行ってらっしゃい!
『逆光』
2024/1/23 (晴れ)
こんな夢を見た。
とても美しい、神秘的な風景の広がる大木の下、逆光で顔の見えない貴方が泣いていた。どうしてそれが泣いているんだと思ったのか分からないけれど、何故かそう感じた。
貴方について私は何も知らない。いつか出会う運命の人なのか、それとも、前世の知り合いなのか。
目が覚めると同時に書いている夢日記の中には毎夜、私の知らない貴方が増えていく。
『タイムマシーン』
20XX年。一生に一度だけタイムマシーンが使えるようになった。未来の僕はどんな人間になっているのだろうか。そんな思いで未来に来たのに、僕はもう居なかった。なんでも、タイムマシーンで過去に行ってしまったらしい。未来の自分に会えると思ってきたからショックだったが、ある疑問が浮かんできた。
一生に1度しか使えないのに、僕はどうして過去に行けたの?
『特別な夜』
学校から帰ったらバイトに行き、ご飯を食べてお風呂に入り眠る。何の変哲もない、いつもと変わらない生活だ。両親がいた頃の方がまだましな生活だった。それでも、借金返済まで頑張れていたけれど、もう限界だ。首を括ろうとした時、母が僕を抱きしめていた。驚いて前を見ると、そこには泣いている父がいた。声は聞こえないけれど、「よく頑張ったな」と言ってくれているような気がした。こんなに近くにいたのならもっと早く来て欲しかったと言おうとしたが、そんな野暮なことを言うには余りに惜しい。ああ、僕のクソみたいな人生でこんなにも素敵で特別な夜は初めてだよ。