心に模様をつけて記したい。
普段日記などつけない私が不意に思い立ちノートを開く。
思い切って新しいノートまで開いて。慎重に。でも時々気が急いて書き損じながら。
ようやく心が落ち着いた。
改めて見ると感情が前に前にとでた文章だった。人に見せるためではない。自分しか見ないしわからないであろう感動と興奮。
このページを見れば即座に思い出すだろう。
この日の心模様を。
今日の心模様
正しい選択肢が僕を睨め付ける。迫っている。
選べ、と。間違えるな、と。
だがどうしてもできなかった。
ふと笑みが溢れる。
どちらを選んでも地獄だ。
一方は永続的な幸福が待っているが僕にとっての地獄。
もう一方は誰にとっても地獄。平等な、平らな世。
ならどうでもいい。
僕は腕を振り下ろす。
たとえ間違いだったとしても
雫が一つ二つ。規則的に落ちていく。
リズミカルなそれに、耳をすませる。
まるで音楽だ。
水滴が水面を叩き、交わる音は不思議と心を落ち着かせてくれる。ついつい聞き入ってしまいそれが不意に止んだ。
終わってしまった。
そう目を開ければ器には多くの雫を受け止め溢れかえっている。
もうどれほど経っていたのかわからない。
それくらいテーブルの上に水がしたたっていた。
何もいらない。
そう言って欲しかった。
もし聞けたら、私はとんでもなく幸せなのだ。
だって私はもう何もかもを捨てるつもりでいる。
お気に入りのドレスもネックレスもいらない。香水もマニュキアだって。苦労して手に入れたポストだって同じ。
なのにあなたはそうじゃない。
私が全て手放したところで気まぐれに映るのだ。
悔しくてやけを起こしそうになる。
最後のプライドで涙だけは見せなかった。
何もいらない
誰かがいう。
いい事ないよ、と。
誰かがいう。
より良いものを選び取れる、と。
どちらが正しいのだろう。どちらも正しくて間違っているのだろう。
様々な経験をもってはじめて口にする。
経験しなければ口にできない言葉。
希望であり落胆であり。
切望であり覚悟であり。
今はまだ選べるのだ。選ばなければならないのだ。
見る、ということすら、選択肢に割り振られていてる。
もしも未来が見れるなら