枯葉舞うなか佇む横顔に目を奪われた。
秋に舞い落ちるは紅葉(こうよう)、果実、恋の音。
それを自覚すると葉擦れの音が心音にさえ思える。落ちつかせることが出来ないまま立ち尽くす。
不意に顔を上げる君と目が合った。
「綺麗だね」
それは、後ろに見える紅葉(もみじ)にむけてだ。解っていても、心臓が高鳴ってしまう。
秋の恋とは、どうしてこうもざわつかせるのだろう。
大事にしたい。
本人に伝えれば少し驚いた顔をする。と思えばそっぽを向いてしまう。誤魔化すことも、聞こえないふりもされていない。だが返事だけがもらえない。もう一度伝えようとすれば口を塞がれる。
「聞こえてるよ」
明朗快活な君にしては歯切れの悪い声。それでいて赤い耳。
ある意味答えだ。
君が穏やかな顔で寝息を立てている。
それを見ていると自然と顔が綻ぶ。どんな夢を見ているのだろう。そっとその頬を突っついた。柔らかく押し返される指。
もう一度突っつくとむにゃりと口元が動いた。それでも起きる気配はない。流石にこれ以上触れば起きてしまう。それでもその顔をもう少し見ていたい。
「時間が止まればいいのにな……」
光の群れが窓の外から見えている。
天を貫くように聳え立つビル。その周りを忙しなく走る車のライト。
それらは別々に見ると寂しいのに纏まるとどうしてこうも綺麗なのだろう。
ここは明るすぎて星が見えない。だが此処こそが流星群の中なのだ。人間の文明が生み出した蠢く流星群は今日もどこか忙しない。
お題『夜景』
雪の原を踏み荒らしたいと言うと同意見がかえってくる。
だがこれが花畑になると途端に非難の目に変わるのだ。
「どう思う」
「……至極真っ当な反応だと思う」
そうかな。そう首を傾げる。
「なんで人はお花畑でピクニックしたがるの?」
「綺麗なものを見ながら食事したいからじゃないの」
「お花を踏み潰してまで?」
口をへの字にしながら課題を進めていく。
「ならさ、踏み荒らしても怒られない花畑を作ろう」
へ?そう聞き返す間もなく部屋を出ていった。かと思えば大量の包装紙を抱えて帰ってきた。