『暗がりの中で』
膝を抱えてうずくまる貴方に灯りをあげましょう。
この蝋に火を灯せばきっと、
貴方を害するすべてのものから守ってくれる。
そんなおまじないみたいな灯りを貴方に。
軈て蝋は溶け、火は消え、灯りは失われるでしょう。
そうしたらまた灯りを届けにきます。
だから貴方は何も心配しないでいてね。
『愛言葉』
例えお前が生ゴミになったとしても愛してるよ。
嗅覚までは誤魔化せないから、
「くっせぇ」って言っちゃうかも知んないけど。
別にそれが悪いって意味じゃないから。
鼻つまみたくなるくらい臭くても、
目背けたくなるくらいグロくても、
それがお前であるなら俺は愛せるから。
吐瀉物だろうが痰だろうが愛するから。
お前が五十過ぎた頭皮の薄いオヤジになろうが、
体臭がきつくて脂でギトギトのオヤジになろうが、
それがお前ならそれで良いんだ。
どんな世界線でだって俺はお前が好きなんだ。
中指立てて人を虐めるような悪人でも、
快楽のために人の命を奪うような犯罪者でも、
弱者ばかりを狙う救いようのない人間だとしても、
それでもお前を愛してるよ。
否定はするし反対もするし、
時にはぶん殴ることもあるかも知んない。
でも絶対に嫌いにはならないよ。
絶対に一人にはさせないよ。
だからどうか、俺のことを嫌わないでいてね。
『カーテン』
カーテンが風を含んでふくらんだり、
風に引かれて窓の外へいくことを
『窓が呼吸している』と表現した君に
私は一生追いつけない。
『力を込めて』
力を込めて殴ってやったんだ!
元の形が分からなくなるまで殴ってやったんだ!
だって君が悪かったから。
僕を怒らせた君が悪かったから
だから殺意を持って君を殴った。
悪かったとは思ってるよ。
そんなに殴るつもりはなかったんだ。本当さ
でも一度込めたら中々消えなくて
殺意はきっと愛を含んでいて
それが心地良かったんだ。
それでもね、
僕は別に君を傷つけたかったわけではないし
君に嫌われたかったわけでもない。
信じられないかもしれないけれど、
君のことを愛しているんだ。本当に
込めた力は愛なんだ。
受け取ってくれてありがとう
大好きだよ。
『巡り会えたら』
いつかいつの日にか
貴方とまた巡り会えたとしても、
私は貴方のことなんて忘れて
呑気に笑っているかもしれない。
その時はどうか頬を撫でてね。
貴方の手の温もりはきっと忘れないはずだから。
だけどもし、それでも私が気がつかなかったら。
その時はどうぞ私を殴って。
打って。蹴って。踏んで。切って。刺して。焼いて。
気が済むまで貴方の好きなようにして。
それでも気がつかないようなら、
きっとそれはもう私ではないのだわ。
だからその時は、ね、分かるでしょう。
その時は貴方がそれの心臓を止めるの。
それじゃあどうか、また巡り会えますように。
貴方の幸福を願っているわ。