冬山210

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9/21/2024, 8:28:16 PM

『秋恋』

この季節、私は世界で一番美しく在れる。
どんなに強く輝いていたって、
見えなければ無いのと同じでしょう?

私だけがここに在る。
他の奴らなんて目じゃ無いわ。
今この場にいるものたちの中で、私が一番輝いている。

だからどうか目移りしないで
南の空を見つめなさい。
18番目の輝きだって、今ばかりは一等綺麗な筈だから。



 秋の夜は魚の口に恋をする。
 フォーマルハウトはすぐそこに。

9/20/2024, 5:07:06 AM

『時間よ止まれ』

時間よ止まれと君が願うから、
世界の時計を壊してきた。

時計の針はもうどこも指していないよ。
秒分時間に囚われず、生きたいように生きたら良い。

混沌とした不規則な世界で、
君の時間は止まるのだろうか。

7/26/2024, 4:55:52 AM

『鳥かご』

鳥かごの中から飛び出した鳥が、
いつかここに帰ってくるのではないかと思い、
せっせと水と餌の交換をしている彼女を
鳥かごの中に閉じ込めてしまいたいと思うのだ。

7/5/2024, 5:32:56 PM

『星空』

あんなに愛した星々から、
「見たくもない」と目を逸らした
あの日をきっと僕は忘れない。

 それは冬の日のことでした。
 十八の私は、進路だなんだと
 見たくもない現実ばかりを見せられいて、
 大変疲弊しておりました。
 学校帰り、駅から出た私はふと空を見上げ、
 確かにその両目に星空を映したのです。

 そこにはいつもの通り、
 眩しく輝く星々がおりました。
 普段なら「もっとよく見たい」と
 瞳孔を開かせていたところです。
 けれどその時、私の身体は初めて
 星々に対して拒否反応を示しました。

 「見たくない」

 咄嗟に顔を背けました。
 地面を見ながら歩きました。
 そんな自分が惨めでなりませんでした。

星々の輝きが眩しくてたまらなかったあの日。
とてもじゃないが見ていられなかったあの日。
あんなに愛した星たちから、
目を逸らしてしまったあの日。

あの日をきっと僕は忘れない。
そうして今日も星空を眺める。

7/4/2024, 10:55:56 AM

『神様だけが知っている』

例えば自分がいつ死ぬのかとか、
何故この人に出会ったのかとか、
この世に生まれてきた理由とか。

そういうことを知っている者が神なのだとしたら、
私は間違いなく彼らにとっての神なのだ。

しかし、私というのはただの人間で。
この身を組織するものは、
彼らの身を組織するものと大きく異なるわけではない。
それどころか、
私と彼らを同じ次元に置いて見れば、
彼らの方がよっぽど優れた存在なのだ。

とても、申し訳なく思う。

もっと立派な人が貴方たちの神だったなら、
今よりも幸せになれていたかもしれない。
でも残念なことに、貴方たちを生み出したのは僕だ。
自分より劣る者に自分を決められるのは苦痛だろう。
ごめんね。



とはいえ、
このようにして私が彼らのことを考えるということも、
神様だけは知っている筈なのだ。

非常にこの世はマトリョーシカで、
本当の頂点なんて何処にあるのか分からない。
最高神様からすれば、
全てはアスラナスより小さなことなのでしょうね。

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アスラナス……高校生の頃の僕が考えた、
       今よりずっと未来で見つかる、
       ミジンコよりも小さな微生物。

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