『明日、もし晴れたら』
明日、もし晴れたら、君に傘を返しに行こう。
電車に乗ってバスに乗って、君の元まで届けに行こう。
日傘をさして傘を持つ。
晴れているのに傘を持つ。
すれ違いざま幼子に、「なんで傘持ってるの?」と
指をさされたって気にしない。
今、私にはこの傘が、赤い糸のようにすら見えている。
これは君と私を繋いでくれる運命の傘なのだ。
小指で持つには少し重たいけれど、
その重みすら愛おしい。
『澄んだ瞳』
その瞳が欲しいと思った。
ガラス玉のように透き通っていて、
冬の夜空のようにしんとしていて、
朝露のように煌めいている、
その瞳が欲しいと思ったんだ。
綺麗にとって保存してあげたかったけど、
とってしまったらその輝きは消えてしまうのかな。
仕方がないから君のまま大切にしようと思う。
君のその澄んだ瞳が濁ることのないように、
ずっとそのまま僕のところにいてくれるように、
大切に大切に育ててあげよう。
見るもの全てを綺麗なものに変えてあげれば、
その瞳は綺麗なままだろうか?
良いだろう。やってやろう。
その瞳のためなら僕は何だってできてしまう。
汚いものも醜いものも、
君に相応しくないものは全部僕の手で退けてあげよう。
ほら、ごらん。
君のためだけに用意された綺麗な世界だよ。
ここで二人で暮らしていくんだ。
君の瞳を守るために。
………?
どうしてそんな目をするんだ。何がいけないんだ。
君の瞳を曇らせるのは、一体……。
ああ、そうか。そうだね。
汚いものがまだあったね。
『花咲いて』
花咲いて 花咲いて 萎んで枯れて
あの子が あの子が 泣いているの
「大丈夫 大丈夫」 頭を撫でて
慰めてあげようか
二畳半の王国 囚われのお姫様
羊枕の上で今日も眠るの
ラベンダーのお香焚いて 薄紅の頬に触れる
忌々しいその左目 僕に頂戴 ね
仄かに香るラーヘンデル
あたたかな大きな手のひら
愛しいあなた思い出して
瞳を開けるの 開くの 入るの 光
「 …!」
花咲いて 花咲いて 蝕んで育つ
あの子が あの子が 泣かないように
「大丈夫 大丈夫」 まぼろし撫でて
幸福を迎えようか
もう眠らなくていいよ
囚われなくていいよ
何処へでも自由にお行きなさい
『もしもタイムマシンがあったなら』
タイムマシンがあったところで、
過去も未来も変えられやしないよ。
俺にはそんな力も勇気もないもの。
俺にできるのは私の頭を撫でてやることくらいだ。
過去へ行って抱きしめてやろう。
「大丈夫だ」と言ってやろう。
きっとそれだけで私は少しだけ楽に生きられる。
『今一番欲しいもの』
完成した期末のレポート。
来週受ける期末テストの答え。
今期の単位。
だが、まぁ、そんな現実的な本音はつまらないな。
今一番欲しいものは、楽園へ行ける権利だ。
極楽浄土でも桃源郷でも理想郷でも何でも良いが、
とにかくそのような場所へ行ける権利だ。
アヴァロンでもイーハトーブでも良い。
善い魂の者が逃れようのない苦しみを抱えていて、
心から「助かりたい」「楽になりたい」と願ったときにメシアが生まれるんだよ。
メシアは神様からの命を受けて願い主を楽園へと導く。
楽園には願い主を害するものは一つもないんだ。
という救世主システムがある世界観の話。
設定を考えるだけ考えて放置している。
文才が欲しいな。作りかけの物語を完成させたい。
必要なのは創作意欲か。
今一番とか、欲しいものが多すぎて選べないわ。