冬山210

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『澄んだ瞳』

その瞳が欲しいと思った。

ガラス玉のように透き通っていて、
冬の夜空のようにしんとしていて、
朝露のように煌めいている、
その瞳が欲しいと思ったんだ。

綺麗にとって保存してあげたかったけど、
とってしまったらその輝きは消えてしまうのかな。

仕方がないから君のまま大切にしようと思う。
君のその澄んだ瞳が濁ることのないように、
ずっとそのまま僕のところにいてくれるように、
大切に大切に育ててあげよう。




見るもの全てを綺麗なものに変えてあげれば、
その瞳は綺麗なままだろうか?

良いだろう。やってやろう。
その瞳のためなら僕は何だってできてしまう。
汚いものも醜いものも、
君に相応しくないものは全部僕の手で退けてあげよう。


ほら、ごらん。
君のためだけに用意された綺麗な世界だよ。
ここで二人で暮らしていくんだ。
君の瞳を守るために。

………?
どうしてそんな目をするんだ。何がいけないんだ。
君の瞳を曇らせるのは、一体……。
ああ、そうか。そうだね。
汚いものがまだあったね。

7/31/2022, 6:25:40 AM