冬山210

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7/17/2022, 7:44:14 PM

『遠い日の記憶』

君は覚えてないだろう。
女の子に声をかけてばかりの俺を叱ったこと。
嫌なことがあるとすぐ煙草を吸う俺を叱ったこと。
いつまでも母さんのことを引きずっていた俺のことを
叱ってくれたこと。

君が俺のために怒ってくれて、俺のことを思って泣いてくれて、それが何より嬉しかったんだ。
君のおかげで俺の人生は救われたんだ。


最期の時、俺は君を守ったつもりだったんだけど、
多分守れてなかったんだね。
あの後君もやられちゃったんだろう。
悔しいな。君にはもっと長生きして欲しかった。

けど、一緒に終われたからこそ、この平和な世界でまた君と生きていられるんだと思う。


もう君は昔の君じゃない。
かつての出来事を覚えているのは俺だけだ。

それでも、君は相変わらず優しくて、美しくて、厳しくて、俺のことを叱ってくれる。俺の隣にいてくれる。
例え君が何も覚えていなくても、君との時間が無かったことになるわけじゃない。そうでしょ?

ただ、君の隣で君の笑顔を見続けたい。
前世の記憶があろうとなかろうと、今も昔も俺の願いは変わらないんだ。

7/17/2022, 8:09:08 AM

『空を見上げて心に浮かんだこと』

空は広くて大きくて、遠いよね。
当たり前のように僕らの頭上に広がっている。

空の先に宇宙があることは、
海の底に深海が広がっていることと
同じことだと思うんだ。
深空とでも呼べば良いのにね。

深海も宇宙も未知に溢れているけれど、
人はどれだけ深く、どれだけ高く、
この世界を知ることができるのだろう。

ちょっとだけ悲しくなった。
少しだけ怖いよね。

大丈夫、明日も生きていけるよ。
終わりの日は決まっているのだから。

7/11/2022, 3:05:51 AM

『朝、目が覚めると泣いていた』

朝、目が覚めると泣いていた。
そんなことが一度でもあっただろうか。

泣くほど悲しい夢も、泣くほど怖い夢も、
多分一度も見たことがない。

……ああ、でも、子どもの頃に一度だけ。


お母さんと一緒の布団で寝てたとき、
怪獣に追いかけられる夢を見たの。

怖くて怖くて、「逃げなくちゃ!」って思って、
必死に手足を動かした。

ふと目が覚めたのだけど、まだ寝ぼけていて、
私は現実でも必死に手足を動かしていた。

そしたらびっくり。

私は走ってるつもりだったんだけど、
横にいるお母さんのことをぽかぽか叩きまくってたの。
お母さんは起きてなかったけど、顰めっ面になってたのを覚えてる。あの時はごめんね。

兎に角そのくらい怖かったの。
子どもだったこともあって、あの時だけは泣いていたのかもしれない。もうずっと昔の話だけれど。

7/6/2022, 2:56:28 AM

『星空』

学校に泊まったことはあるかい。
夜の屋上に出たことはあるかい。
あれは人生で一番幸せな時間だった。


重たい扉を開けるだろう。
やけに高い段差を上がって外に出る。
少し肌寒い。
長袖のジャージが暖かい。

夜景が綺麗だな。
ずっと向こうの明かりまで見える。

上を見ろよ。頭上を見ろ。
ほら、輝いていらっしゃる。

屋上にヨガマットを敷いて寝そべるんだ。
見てみろよ。その目に焼き付けろよ。
なぁ、プラネタリウムなんか比じゃねぇな?

目を閉じて風の音を聞いた。
目を開けばこの世で一番綺麗な景色が見えた。

幾つもの星々が、きらきらと、きらきらと、眩しい。
こんなにも広い星空を一切の障害物なしに、
見られてしまって良いのだろうか?
贅沢がすぎるぞ天文部。


「夏の大三角の真ん中にいるはずなんだよ」
そう言って君と、こぎつね座を探した。

あの一夜を忘れることはない。

7/4/2022, 12:02:33 AM

『この道の先に』

この道の先には終わりが待っているのだと、
最近になってやっと気がつくことができた。

私が楽しもうが苦しもうが、泣こうが笑おうが、
いつか必ず終わりの日が来る。
誰にだって等しく、待っているのは死だ。

死にたいと思っていても、生きたいと思っていても、
結局最後はみんな死ぬんだ。
それが何よりも嬉しくて、何よりも安心した。
こんな私でもいつかはちゃんと終われるの。

待ち遠しいね。
今か今かとその日を待つの。
その日が来るまで私は生きるの。

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