冬山210

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『星空』

学校に泊まったことはあるかい。
夜の屋上に出たことはあるかい。
あれは人生で一番幸せな時間だった。


重たい扉を開けるだろう。
やけに高い段差を上がって外に出る。
少し肌寒い。
長袖のジャージが暖かい。

夜景が綺麗だな。
ずっと向こうの明かりまで見える。

上を見ろよ。頭上を見ろ。
ほら、輝いていらっしゃる。

屋上にヨガマットを敷いて寝そべるんだ。
見てみろよ。その目に焼き付けろよ。
なぁ、プラネタリウムなんか比じゃねぇな?

目を閉じて風の音を聞いた。
目を開けばこの世で一番綺麗な景色が見えた。

幾つもの星々が、きらきらと、きらきらと、眩しい。
こんなにも広い星空を一切の障害物なしに、
見られてしまって良いのだろうか?
贅沢がすぎるぞ天文部。


「夏の大三角の真ん中にいるはずなんだよ」
そう言って君と、こぎつね座を探した。

あの一夜を忘れることはない。

7/6/2022, 2:56:28 AM