ozenzai/28号機

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2/19/2023, 12:15:07 PM

_枯木_



儚い、一寸でも。


「−−この葉っぱが落ちたら、私も散る…きっと、ほら…よく言うじゃない?」


公園のベンチ、目の前に枯木。
温かい珈琲が身体を満たしていく…



私達にとって、この枯木は思い出深く…彼女と出逢った最初の場所だった。

___今日も、他愛もない話を続けていた






「一寸‥またアニメに影響されたの?」




はぁ…と、溜息を零し、呆れていた私だったが…此方をじっと見つめる彼女の視線に感づいた


−−その表情は、どこか哀しみを含んだ笑みに見えたが…その表情さえ、煙草というモノで、ふかしてしまう彼女。


「…け、煙た…!!アンタ、肺が弱いって言ってたじゃ___な…は、はぁ!?一寸!!」




白煙に包まれたその身体は段々と宙へ浮いていった…「フっ、」そう…小馬鹿にした様に笑い、彼女が手に触れようと…



「じゃあね、」


その言葉に、一気に走馬灯なんて…思い出がどんどん涙として溢れていく。




私をすり抜けたその手が、透明に…目の前で徐々に消えていく…





________カラッ、



微かに揺れる瞳に、思わず手を伸ばしてしまった…が、目を擦れば…幻想の様に思えてしまって…

手に当たった珈琲缶が枯木の前にコトン、とぶつかった




−−霞んだ視界はボヤが掛かるが…確かにその空き缶を手に取った時−−


「……あ、」


「ヒラリ、」…枯木の最後の一枚が舞い落ち、自身の手に触れた。




________儚い。一寸の時だとしても…




目の前の枯木は…しっかり、立っていた







1/24/2023, 3:28:53 AM

_こんな夢を見た_


規律的なアラーム音で起こされる朝。

いつも通りの学校

部活が終わり、電車の揺れに身体を任せて眠りについた…19時半、頃





夢の中、一人の少女の存在

その少女は、大きく…眩しいもので


「________私、歌手になる!」


テレビの前で目を輝かせる一人の少女






-それは、かつての自分だというのに-


大きなステージで歌い、目の前いっぱいのライトに照らされながら…


…幸せそうな人の顔を見たかった。



「私の歌で、皆を笑顔にする」





そんな景色を… -夢見ていた-





「ガタン」と電車が揺れ、

夢の旅は終わりを告げる



その時…ヒラリと一枚の紙が膝元に落ち

開けたままのカバンに気付き、肩を落とした



「…進路希望、調査」


ふと、その紙きれに目をやり…小さな声で呟いた





「…歌⸺いや、A大…に進学…」


その夢…歌手という泡沫は、

本当に、泡のように儚く消える…




いつから…こんな紙きれに囚われる人生になってしまったのだろうか、




私はずっと… -夢を見ていた-

1/23/2023, 4:16:15 AM

_タイムマシーン_


全身から、じんわりと力が抜けていく

腹部から血が滲み出て、後輩の泣きそうな面が見えた。


身体が、猛烈に熱く感じたり

その後は…体温が下がっていくだけ。



「________先輩_」


えーっと…最期に残るのって聴覚?だっけ…最期って、こんなんなの?…なんか、もう少し生きたかったけど…


もし、-タイムマシン-

そんなものがあったら…少しは…





…なんて、最後の学園生活…

選り取り緑だったな、お前とも会えた




「タイムマシーン」なんて、無くても…






じゃあな、後輩。





精一杯、絞り出した言葉を…最期に


意識はプツリと切れた