_枯木_
儚い、一寸でも。
「−−この葉っぱが落ちたら、私も散る…きっと、ほら…よく言うじゃない?」
公園のベンチ、目の前に枯木。
温かい珈琲が身体を満たしていく…
私達にとって、この枯木は思い出深く…彼女と出逢った最初の場所だった。
___今日も、他愛もない話を続けていた
「一寸‥またアニメに影響されたの?」
はぁ…と、溜息を零し、呆れていた私だったが…此方をじっと見つめる彼女の視線に感づいた
−−その表情は、どこか哀しみを含んだ笑みに見えたが…その表情さえ、煙草というモノで、ふかしてしまう彼女。
「…け、煙た…!!アンタ、肺が弱いって言ってたじゃ___な…は、はぁ!?一寸!!」
白煙に包まれたその身体は段々と宙へ浮いていった…「フっ、」そう…小馬鹿にした様に笑い、彼女が手に触れようと…
「じゃあね、」
その言葉に、一気に走馬灯なんて…思い出がどんどん涙として溢れていく。
私をすり抜けたその手が、透明に…目の前で徐々に消えていく…
________カラッ、
微かに揺れる瞳に、思わず手を伸ばしてしまった…が、目を擦れば…幻想の様に思えてしまって…
手に当たった珈琲缶が枯木の前にコトン、とぶつかった
−−霞んだ視界はボヤが掛かるが…確かにその空き缶を手に取った時−−
「……あ、」
「ヒラリ、」…枯木の最後の一枚が舞い落ち、自身の手に触れた。
________儚い。一寸の時だとしても…
目の前の枯木は…しっかり、立っていた
2/19/2023, 12:15:07 PM