ozenzai/28号機

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_枯木_



儚い、一寸でも。


「−−この葉っぱが落ちたら、私も散る…きっと、ほら…よく言うじゃない?」


公園のベンチ、目の前に枯木。
温かい珈琲が身体を満たしていく…



私達にとって、この枯木は思い出深く…彼女と出逢った最初の場所だった。

___今日も、他愛もない話を続けていた






「一寸‥またアニメに影響されたの?」




はぁ…と、溜息を零し、呆れていた私だったが…此方をじっと見つめる彼女の視線に感づいた


−−その表情は、どこか哀しみを含んだ笑みに見えたが…その表情さえ、煙草というモノで、ふかしてしまう彼女。


「…け、煙た…!!アンタ、肺が弱いって言ってたじゃ___な…は、はぁ!?一寸!!」




白煙に包まれたその身体は段々と宙へ浮いていった…「フっ、」そう…小馬鹿にした様に笑い、彼女が手に触れようと…



「じゃあね、」


その言葉に、一気に走馬灯なんて…思い出がどんどん涙として溢れていく。




私をすり抜けたその手が、透明に…目の前で徐々に消えていく…





________カラッ、



微かに揺れる瞳に、思わず手を伸ばしてしまった…が、目を擦れば…幻想の様に思えてしまって…

手に当たった珈琲缶が枯木の前にコトン、とぶつかった




−−霞んだ視界はボヤが掛かるが…確かにその空き缶を手に取った時−−


「……あ、」


「ヒラリ、」…枯木の最後の一枚が舞い落ち、自身の手に触れた。




________儚い。一寸の時だとしても…




目の前の枯木は…しっかり、立っていた







2/19/2023, 12:15:07 PM