こわがりな弟がわたしにいたのは25年まえだった
5歳の当時、わたしの手を掴んで後ろを歩く2歳の彼はとてもかわいかった
「おばけ…いる…?」
トイレに行くときいつも聞いてくる。
「いないよ、そんなのいるわけない」
わたしはいつもそう答える。
でもその晩はいつもとすこし違っていた。
床から出る黒い無数の手。
その手に掴まれて、助けを求めて声を出しながら起きたのだ。
鼓動が大きい。 そんな夢普段みないのに…
ちょんちょん
肩を触る指にビクッ!とした
弟だった
「ねーね、おしっこ」
はぁ…とため息を尽きながら、わたしは弟と手をつなぎ暗くて寒い廊下に出た。
きすをすると恋に落ちる
わたしの住んでいる地域ではこんな言い伝えがあった
あの日は空が鈍くひかっていて、分厚い雲の上が光っていたんだ そのぼんやりとした弱い光を見ていたら、小さい何かが降ってきた
ゆっくりゆっくりと くるくる回りながら
何かわからなかったけど近くに来たときに目を凝らしてみたらクリオネに似たものだった
それはわたしの口元まできて触れた
その瞬間その何かは姿を変えて、綺麗な男の子にはって 地面に倒れた
わたしはいそいで頭を支える
美しい顔をして眠っているその人は綺麗な金髪をしていて、星が染まったようなキラキラとした髪をしている
わたしが髪をなでると、わたしの指も光り、美しく輝いた
何とかして彼をかつぎ、家のベッドに寝かせた。
色々あった不思議な日だったな…
目を閉じて眠りについた
暗い影、誰かの息遣い
唇に何かが触れた
ぼんやり何かを見ていると綺麗な男の人の顔が現れた
その唇はひんやりと冷たかった
すれ違った女の人が泣いていた。
仕事帰りにぼーっと歩いてたら突然視界に入ったからギョッとした。
彼女はなにがあったのだろう…
見知らぬ自分が声をかけられるわけでもなく、ただ遠くなっていく小さな背中を見送ることしかできなかった。
彼女が報われるといい。
幸せを小さく祈りながら今日も真っ暗な部屋を目指して歩く。猫でも飼おうかなぁ…
またね
きみはそういってぼくから離れていく
必死にその手を掴もうと伸ばしてみたけれど届かなくて…
まただ…
また同じ夢 気づくと泣いている
きみは誰だ? とても大切な人のような気がするけど思い出せなくて でも昔から知っているような気がする
長い髪がサラッと揺れるさまをぼくはただボーっと見つめてしまう
その手を引き止めなきゃ 届かなくてもどかしい
うっすら差し込む朝日の光に 勢いよくカーテンを開けて バンザイするようにしてめいいっぱい吸い込む
おはよう
涙が飛んでって
その滴は土に落ちた
最後の一滴を必要としていた彼は芽を出した
頬はすっきりとし 気持ちいい風がなでる
秋の爽やかな風だ
悲しくて寂しくて出た涙も命を育んでいたことを彼女は知らない
これは広い空の下の秘密の物語。