夏樹は宝物探しが得意だ。
今日も散歩に出かける。宝物を探しに。
キラキラと光る太陽、綺麗な青色の空、美味しそうな綿菓子みたいな雲、そして心くすぐる甘い金木犀の匂い。
そこら中に宝物が溢れていて、今日もワクワクして出かける。
あっ、可愛いピンクのコスモスみたいなお花。
「今日もかわいいね」と声をかける。
お気に入りの本を持って、温かい砂糖入りの紅茶を鞄につめて、ツバの広めの帽子も持ってきた。
準備は万端だ。
ハミングをしながら背の高い木々がたくさんある公園にやってきた。
日陰になってるベンチを見つけて座る。
顔に心地良い甘い風が当たる。
目を閉じて深呼吸して…
目を開けると葉のひとつひとつに太陽の光が反射してキラキラして見えた。
今日もいい日だ。平和だなぁ…
鞄から本を取り出し、水筒を置き 栞が挟んでるページを開いて読み始める。
本の世界にあっという間にのめり込んでいた。
読んでいたページに葉が落ちてきて、ふっと前を見ると向かい側のベンチに男性が座っている。
眠っているようだ。本を開きながら…
心地いい天気だもんなぁ…
ふふと微笑み、甘い紅茶を一口飲み、またページを開き始めた。
何時間経っただろう、風が少し冷たくなってきて
そろそろ帰ろうかなと思ったちょうどそのとき、向かい側のベンチに小さいタオルが落ちていた。
あ…、きっとあの人のだ。
どうしようかな… 下に落ちたら汚れちゃうなぁ
またここで会えたとき渡せるかな
そう思い、鞄にしまった。
またお休みの日が来た。
今日もあそこに行ってみよう。
夏樹はお気に入りの公園に出かけた。
今日は…… いないみたいだな…
ちょっと残念に思い、読みかけのページを開く。
楽しい世界が始まる。
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ
大きな音が全身に響いた。
どうやらお腹の音らしい。
おなかすいたな…
と目をあげると、この前の男性がいた。
あっ!!!!!
「あの!」と思わず声を掛ける。
少し離れた向かい側のベンチで「?」の顔をしている男性。
小走りで男性のところにいく。
「あの、これ! あなたのですか?」
鞄からタオルを取り出す。
『!!!!!』
『……ぼくの!』
「よかった。大切なものなんじゃないかなって思って… 会えてよかったです」
『ありがとうございます。どこかに落としちゃったのかと思って悲しかったんです。あってよかった。』
「渡せてよかったです。」
『「 あ、雨 』」
『避難しましょう』
2人はいそいで屋根のあるところに走った。
『大丈夫ですか?』
「はい」
肩で息をしながら夏樹はこたえた。
『これ…よかったら使ってください。』
さっきのあのタオルを渡された。
「そんなそんな、せっかく渡せたのに」
『いいんです、せっかくだから使ってください』
「じゃあまた洗濯してお返ししますね」
それから2人は好きな本の話、食べ物の話、歌の話、たくさん話した。
驚くことに好きなものが次から次へと出てきて、
気づくと日が落ち始めていた。
そろそろ、かえりましょうか、
と彼があるき出そうとしたとき…
「あっ、いかないで」
夏樹が止めた。
「あなたの名前… まだ聞いてない
教えてもらってもいい?」
『僕は大樹。大きい樹でだいき。きみは?』
「すごい。わたしも樹なの!
わたしは夏の樹で夏樹!」
『わぁすごい。こんなことってあるんだね』
2人はくすくす笑いながら夕焼けに照らされた街路樹を歩き出した。
それからそこは2人の大切な場所となり、今は隣で本を読むデートが毎週の楽しみになっている。
高く高くのぼっていく
ものすごいスピードで
一筋の光のように
どのくらい時間が過ぎただろうか…
真っ暗闇を抜け心地よい温かさ、やさしい光に包まれた
ふわふわとした大地に足をつく
私を乗せた龍はお辞儀をして空に昇っていった
前から影が歩み寄ってきた
懐かしい顔。
小学生の時に生き別れたおばあちゃん、
とても可愛がった愛犬のポチ、私が怒ったまま会えなくなった親戚のおばちゃん、優しい笑顔が大好きだった近所のおばちゃん
「よくがんばったね」
あぁわたしは死んだのか……
精一杯ではないけどいい人生だったかもしれない…
顔を上げて潔くみんなのもとに歩みだした
……………と思ったら自分の部屋にいた。
!????
夢だったのか…
何かを握りしめていることに気づきそっと手を開くと……
固く小さなキラキラと光るもの
龍の鱗だ。
あの龍は確かに…
朝焼けの赤い太陽の光に透かしてみるときらっと光り部屋中が透明な赤い光に包まれた
そっと握り、机の引き出しの小さな小箱にしまう
空をぼーーと見上げてると
一筋の白い線が空に昇っていった
子どものようにないたあの日
彼の胸の中で わんわん泣いた
別れるのが悲しくて 行ってほしくなくて
私が落ち着くまでずっと 困った顔で見守っててくれてたね 背中に手置きながら
あの手のぬくもりがまた優しくて温かくて
涙が溢れて止まらなかった
離れてもまたあえると思っていたのに
その日は来なくて
永遠のバイバイになってしまった
きょうもそこから私のこと見てくれていますか?
私は今日も笑うからね。
見ててね。
ぼくはきみのなみだの精
きみから生まれた
悲しい気持ちと嬉しい気持ちと安心した気持ち
ぼくにはいろんな気持ちが混ざっているけれど
全部きみの感情だと思ったら愛おしいんだ。
今日もきみは泣いてるね
誰を想って泣いてるんだろう
きみにぼくはみえていないみたいだけれど
そんなのどうでもよくて、
涙の理由もどうでもいいんだ
きみがたくさん泣いてすっきりしてくれるといい
ぼくがいつでもそばにいるよ
見えないぼくからきみへ
たくさん泣いて腫らした目だけれど、
明日はきっといいことが待っているからね。
これはぼくのおまじない。
よしよし、大丈夫。大丈夫。
私の人生はこの板に奪わている。
誰とでも繋がれる時代になった。
ひとりで寂しいときも誰かと話せるようになった。
でもひとりでいられなくなった。私の人生を奪っているモノ。安心をもらえるけど私が生きるはずだった時間。返信を待ってソワソワする心。
いいようで何もいいことなんてない。
これがなければ、好きな人とは繋がれないのか。
私は満たされないのか。
誰かと話すことを望んでこの板とにらめっこするより、自分をいきよう。
時間を取り戻そう。
今までの人生はもう捨ててこれからを。
別れ際にくれた笑顔を大切に胸にしまいながら。