Foster

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11/23/2022, 1:57:48 PM

「なぁ、俺は強いと思うか?」
俺は少し声を震わせながら、友人に問うた。
「どうした、俺にそんなことを訊くなんて。
 急に弱々しくなるんじゃねぇよ、なんて…。」
どうやら彼は困ったらしく、冗談で濁した。
「今日、好きな子にこう言われたんだよ。君は強いから…って。」
「愚問だな。お前が強い筈ないじゃねぇか。」
彼の表情が珍しく、真剣なものへと変わっている。
「それなら、どういう意味だったんだよ。」
「それが狙いだろ。お前の頭ん中を自分の事で一杯にしたかったんじゃねぇ?
 つまりお前は、そいつの手の内に『落とされた』ってことだろ。違うか?
 俺が思うに、そこがお前の弱さだ。
 よってお前は強くない。むしろ『落とされた』弱い人間だ。」
あからさまな皮肉を込め、彼は言い放った。
俺は悟ってしまった。
彼がこんなことを言えるのは、彼も『落とされた』側の人間だったからではないかと。
それと同時に、気付いてしまった。
彼が今までに見た事がない程悲しそうな表情で、何処か遠くを見つめていた事を。

11/23/2022, 1:13:11 PM

幾千の時を越え、出逢い
幾千の言葉を交わし
幾千の愛を語る
何時の日か朽ち行く人生の道半ばに
寄り添う二人が立って居る
若き二人は
この道が我等の人生だと
堂々たる態度で示すのだが
時が経ち、道が狭まるにつれて
寄り添い歩む事が不可能となる
それを悟った男が、繋いだ手を優しく解く
そして立ち止まり、振り返る
何か思う事があったらしく、男は目を閉じた
それから、消え入りそうな声でこう告げた
さぁ行きなさい、愛する人よ
女は歩き続けた
そして、孤独を嘆き立ち止まった
なぜならそこから、道が途絶えていたからだ
何より自分の隣に、愛する人が居なかったからだ