「なぁ、俺は強いと思うか?」
俺は少し声を震わせながら、友人に問うた。
「どうした、俺にそんなことを訊くなんて。
急に弱々しくなるんじゃねぇよ、なんて…。」
どうやら彼は困ったらしく、冗談で濁した。
「今日、好きな子にこう言われたんだよ。君は強いから…って。」
「愚問だな。お前が強い筈ないじゃねぇか。」
彼の表情が珍しく、真剣なものへと変わっている。
「それなら、どういう意味だったんだよ。」
「それが狙いだろ。お前の頭ん中を自分の事で一杯にしたかったんじゃねぇ?
つまりお前は、そいつの手の内に『落とされた』ってことだろ。違うか?
俺が思うに、そこがお前の弱さだ。
よってお前は強くない。むしろ『落とされた』弱い人間だ。」
あからさまな皮肉を込め、彼は言い放った。
俺は悟ってしまった。
彼がこんなことを言えるのは、彼も『落とされた』側の人間だったからではないかと。
それと同時に、気付いてしまった。
彼が今までに見た事がない程悲しそうな表情で、何処か遠くを見つめていた事を。
11/23/2022, 1:57:48 PM