038【カレンダー】2022.09.11
ないとこまるときがある。だけど、じゃまになるときもある。大きな紙のカレンダー。月の半ばになっても、先月の紙をめくり忘れてそのままになってることもよくある。ずぼらだからね。カレンダーは、ずぼらな人間には、スマホのアプリのほうが手軽で気楽で使い勝手がいい。
だけどね。つかい終わった紙のカレンダー。きれいな写真をきりとって、ハンドメイドで封筒をつくったりする。それをつかって、したためた手紙を送ったり、地元の新聞に投稿しておこずかいをかせいだり。ほんのちょっとだけだけど、暮らしをうるおわせてくれる。
銀行とか電気屋さんとか、あちこちで紙のカレンダーを配ってくれるようになるまで、あと数ヶ月だね。やっぱり、ないとこまるかな。来年用も、ステキなのが手にはいったらいいんだけど。
037【喪失感】2002.09.10
いい歳していまさらなにゆってんだよ、と思わないでもないけど。自分って結局、特に突出した何かがあるわけでもない、歴史の流れの中のただのモブなんだなぁ……って自覚するときの喪失感といったら。
いくつになっても、一発逆転の可能性がゼロになるわけでは無いんだ!、なんて大風呂敷をひろげて強引に自分を鼓舞するなんてことも、さすがに無理だよ、って気分になってきたしね。
でも、逆に、他人の評価にかかわらず好きなことを好きなように好きなだけやればそれでいい、っていう、穏やかで、いつも愉快でいられる境地にはなりつつあるのかな。
だから、とうめんは、疲れ切るか飽き切るかどちらかするまで、ここでゴトゴトとなにか書き続けているつもり。
私らって、長い歴史のなかでは、どうせ、忘れ去られる存在だよね。そのことを思うと、いまでも胸を切りつけられるようなキリキリとした喪失感におそわれる。だけど、だからこそ、なんだよ。いまここで、お互いに忘れ難い影響を与えあっていけたら、それがベストをつくす、ってことなんだ、って思うんだよね。
036【世界に一つだけ】2002.09.09
夏の夜の何がツライって、蚊になやまされることだ。一匹たたいても、また、一匹。まるで血液レストランの特等席が空くのを待っていたかのように、あらたな蚊がやってくる。それを、ああ、また来たか、とうんざりしながら、そしてときには、空振りして自分の顔をしたたかにたたいて痛い思いをしたりしながら、一匹一匹、手作業で退治している。
あまりに多い夜は、サイドテーブルにたたいた蚊をならべて、戦果を確認したりする。ひどいときには10匹ちかくならぶときがある。そのなかには、たたき方があまくて、再び飛んでいきそうになるヤツがいたりする。でも、まあ、ほとんどの蚊は即死、あるいは、瀕死だ。
たたいてもたたいてもいなくならないことにはうんざりするが、頑張らぬことには熟睡できないからしかたない。また今夜もか、また来たか、と一匹ずつ始末していく。
だけど、ときどき気がついてしまう。
また来たか、と思いつつ、頭のあたりをブンブンする蚊にねらいをすましているけど、たたきころされたあとで「また来た」蚊なんて、一匹もいないのだ。その証拠に、ほら、さっきまでの戦果がすべて、そこのテーブルのうえにならんでいる。いましがたも、飛び立とうとしたヤツがいた。だが、もうしわけないが、テーブルのうえで潰させてもらった。だから数に一切の齟齬は無い。
とにかく、どの蚊もこの蚊も、死んだら終わり。また来たりなんかできるわけないのだ。だけど人間様は、「また来たか」などとほざきやがって……エラそうに。
世界に一匹だけの蚊。世界に一つだけの命。
わかっている。そのかけがえのなさは。しかし。私は夜は静かに寝たいのだ。睡眠不足はとにかく健康に悪い。こっちだって、明日の元気がかかっているんだからな。
おい、そこの蚊ども。すまないが、永遠に静かになっていただこうか。
035【胸の鼓動】2022.09.08
ついに、ネタ切れです……
柳につばめは あなたにわたし
胸の振り子が鳴る鳴る 朝から今日も
お題を見てからずっと、サトウハチロー 作詞 / 服部良一 作曲のこの歌がアタマのなかでながれっぱなし。
生まれる前の歌なのに、懐メロ番組で聞いて、子どものときから大好きだった。
春に渡ってきた燕が餌を求めて飛び交う季節、梅雨入り前後のしっとりした空気のもとで、緑潤う柳の立ち並ぶ川岸を散歩しているハイカラな洋装のカップル、ってイメージかなぁ。
「胸の振り子」はきっと恋心のドキドキで、それが「朝から」もうすでにドキドキで、さらに、「今日も」ってダメ押しがくるなんて。もう毎日心臓、ドキドキしっぱなしじゃん。どんだけ初々しいんだか!
このおふたり、腕を組んで銀ブラ、とかしたことあるのかしら……キッスももしかして、これから、とか?
こんなに妄想の振り子がドキドキ胸で高鳴るのに、柳と燕という伝統的な取り合わせのおかげで、水墨画のように抑えのきいた簡素な筆遣いの映像が目に浮かぶのが、レトロチックでめちゃめちゃお洒落。
YouTube でさがして、ひさしぶりに聴いちゃおう、っかな。
034【踊るように】2022.09.07
ヤバイ……そろそろ時間だ。オレは腕時計を見た。
と、思わずガン見した。
秒針が踊るように動いていた。謹厳実直に、毎度毎度等しい間隔で動いていた秒針が……踊っていた。
まるで、釣りたての魚を捌いたときに魚体のなかでうごめいていたアニサキスのように、予測不能なぐにゃぐにゃとした動きをくりかえしていた。
こんなことで正確に時刻を表示できるのか? オレはぐるりを見回した。たしか時計屋の看板がアナログ時計だったはず、だが。
看板の時計は、ダリの絵のように溶けていた。
そのときやっとオレは気がついた。
オレがシュールレアリズムの世界に閉じ込められているらしいことに。
それでもオレは正確な時刻を知るために時計を探した。アナログ時計では話にならない。デジタル時計、デジタル時計は何処かに無いか!……と。