034【踊るように】2022.09.07
ヤバイ……そろそろ時間だ。オレは腕時計を見た。
と、思わずガン見した。
秒針が踊るように動いていた。謹厳実直に、毎度毎度等しい間隔で動いていた秒針が……踊っていた。
まるで、釣りたての魚を捌いたときに魚体のなかでうごめいていたアニサキスのように、予測不能なぐにゃぐにゃとした動きをくりかえしていた。
こんなことで正確に時刻を表示できるのか? オレはぐるりを見回した。たしか時計屋の看板がアナログ時計だったはず、だが。
看板の時計は、ダリの絵のように溶けていた。
そのときやっとオレは気がついた。
オレがシュールレアリズムの世界に閉じ込められているらしいことに。
それでもオレは正確な時刻を知るために時計を探した。アナログ時計では話にならない。デジタル時計、デジタル時計は何処かに無いか!……と。
9/7/2022, 12:47:12 PM