回顧録

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3/16/2024, 4:15:55 PM

夜になると寂しがりで怖がりな君は枕を持って
ひとりじゃねれない、って僕の部屋を訪ねてくる。
可愛い妹が自分を頼ってくれることが嬉しかったけど
仕方ないなって顔して、僕は彼女を布団に招いた。
背中をとんとんとたたいてやっていると、
穏やかな寝息が聞こえてくる。僕だけの時間だった。

君は今日も変わらずに、
『お兄ちゃんと一緒じゃなきゃ眠れない』
と言って、ベッドに潜り込んでくる。
本当はもうひとりで眠れるのに、
まったく甘え上手な、妹だ。

かわいい、いもうと。
そんな君に触れるのが、俺はとても、こわい。

『怖がり』



作者の自我コーナー
僕と俺を使い分ける人が好きです。
助詞とか句読点の位置にかなりこだわりがあります。

3/15/2024, 3:34:28 PM

その瞳が好きだった。
真昼の木漏れ日、練習場の切れかかった蛍光灯、
帰りに寄った公園の街灯、カーテンから差し込む朝日。
僅かな光を反射してキラキラと輝く小さな宇宙。

まっさらなシーツを纏って、
声変わりしたばかりの掠れた声で不安げに俺の名前を呼ぶ。

きっと、あいつから見て世界はとても綺麗なんだろう。
たとえそれが仮初だったとしても、俺は守りたかった。
無菌室に閉じ込めてでも俺はあいつを大事にしたかった。

でもあいつは俺に守られてはくれなかった。
ぽろぽろと涙を流しながら、強くなった。

もうあいつは泣かない。

涙腺なんてもう枯れてしまった、と
あいつが煙草でガサガサになった声で笑った。

力強い真っ黒な目はただ現実を見据えていた。

『星が溢れる』



作者の自我コーナー
お察しの通りモデルが居ます
この二人の言葉では言い表せない強い関係性が好きです