2010年3月13日
ぼくは、お人形さんなんだって。ぼくの体には糸が繋がっててね、ずっとずぅっと、お母さんのそばにいるんだって。あとね、お母さんはね、いつも
「あなたまで置いていかないで、ずっと隣にいて」
って、ぼくに毎日毎日言うの。でもね、ぼくは友達と遊びたいの、お散歩に行きたいの、ゲームを友達とたくさんしたいんだぁ。でもぼくの体には糸が繋がってて動けない。だから僕、思ったんだ。
「お母さんが動かなきゃいいんだ!」
今度は、お母さんの番だよ。たっくさんの糸をぼくに繋げた分、ぼくもお母さんに糸を何重にも何重にも巻き付けたの。そしたらね、お母さん動かなくなった!
2023年3月14日
久しぶに日記を読み返した。自分がやったことなのにゾッとする。子供って残酷だな。でも、間違ってなんかない。
なあ、母さん。
僕は、お前の操り人形なんかじゃない。
#ずっと隣で
私は、月に1度自分の頭を壊す。と言っても、別に死にに行くわけではない。壊す。そして、リスタート。その繰り返し。目的は頭を初期化すること。私がこの行為を始めたのは、主様が、分からないことを言ったから。
「お前は、全てを知っていて楽しいか。生きていて…いや、存在していて」
「主様、私はカラクリです。楽しいなどという感情を抱く必要がありません」
「…よく聞け。俺は先が短い。いつおっ死ぬか分からないんだ。お前は俺がガキの頃からそばにいた。それなりに感謝してるんだ。」
「主様」
「いいか、俺はお前をまがいなりにも愛している。カラクリだろうがなんだろうが、家族よりも誰よりもずっとそばにいたのはいつだってお前だ」
「主様っ」
「お前には、幸せに、なって欲しいんだ。俺が、お前を、愛して、いる、から…」
脈がない主様。どんどん体が固くなっていった。この時の私もまだ、主様が亡くなったことを機械的には理解している。
でも、分からない。初めて分からないことが出来た。
愛してるとは、なんだ。
その日から私は愛してるを理解しようと、頭の中にインストールされている知識を全て壊した。インストールされていた知識のせいで理解出来ないのかもしれないと考えたからだ。今月もまた、理解できなかった。愛してるを理解するためだけの知識が欲しい。
ワカラナイ ダカラ シリタイ
#もっと知りたい
「完璧や」
6時。カフェの雰囲気を思わすお気に入りの洋楽のプレイリスト。朝焼けの冷たく気持ちええ空気。淹れたてのアールグレイ。これぞ、平穏な日常の一日。そして完璧な朝や。
ードッカアァァァアン!!!
前言撤回、全く持って平穏やない。壁が吹き飛んだ。あと立てかけてたギターも。修理費いくらやねんこれ。
「はぁ…、どいつもこいつもよう飽きもせんと来るもんやなぁ」
ここは東京のパラレルワールド。ーえ、関西弁やのに東京なんとか思ったそこの君。こーいうアクションものは東京の方がパッとするでしょーが!!
えー、気を取り直して。今や日本中に蔓延った巨獣を駆逐することを目的とし、市民の安全を守る特殊部隊。その名も…
「このドアホ!カッコつけとる暇あるんやったらさっさとコイツ倒せや!!アホか!」
「2回もアホ言うなや、流石に傷付くわ!…ま、いっちょひと騒ぎしますか」
そんなこんなで落ち着けない平穏な日々は続いていく。人知れず、誰もが誰かの平穏を守りながら。そして自分も、こうやって仲間と軽口を叩けることが、どれだけ幸せかも知らずにー。
#平穏な日常
愛の上に平和が成り立つのか。
平和の上に愛が成り立つのか。
はたまた、イコールか。
私は思います。平和を失った上に愛が成り立つのだと。
これはそんな物語。
銃口が突きつけられる。ここは戦場。荒んだ荒野の中、倒れた自分と、自分の上に馬乗りになって銃口を突きつける美しい黒髪の女。女は言う。
「愛してる」
自分は言った。
「愛してた」
「今は…?愛してないの?」
「どうだかな」
「ふふ、相変わらず変な人ね」
自分と女は敵国同士だ。もっとも、それを知ったのはつい先刻のことだがな。
所謂、禁断の恋。自分の一目惚れだった。確かに愛していた。だが、段々と。でも確実に。女を疑い始めた。スパイなのではないかと。答えは、当たりだ。自分が女をスパイだと気付いたことに女が気付いた。そして、押し倒され銃口が突きつけられた。
「動くな!!!」
しまった。女側の国の兵に囲まれていた。まんまと嵌められた。自分は女の方を見た。敵が囲まれてせいぜいいい気分で笑っていたりするのだろうか。
女は、泣いていた。それも自身のこめかみに銃口を当てて。
「本当に、愛してる。私が死んだら、貴方もこの銃をこめかみに当てて死んでね」
銃声が響く。耳が痛い。飛び散った血と脳漿が辺りを真っ赤に染めた。息ができない。何故だ、それでもなお、自分は銃を手に取った。
ーカチ。
弾が、無い。何度も、何度も何度も。その事実を理解したくなくて引き金を引く。だが、どうしたって現実は変わらない。自分は女を抱きしめた。直後、散弾が自分の背中に降ってきた。薄れゆく意識の中、自分は言う。
「愛してる」
これもまた、ある種の愛と平和のお話。
#愛と平和
明後日は、卒業式。なんというか、あまり実感が湧いてこないのが本音だ。
「昼寝でもするかぁ」
今日は公立受験組の入試本番。私立専願の私は短縮授業でお昼に下校した。現在時刻、14時。眠い。
気付くとそこは夢の中で、修学旅行に来ているらしい。
「うわ、なんか俺泣きそう。」
この男子は確か卒業式で隣に座る三橋だ。なんで泣きそうなのかと聞くと、
「だって、また修学旅行に来れたから。このクラスで」
そういえば、三橋はいつもまた修学旅行に行きたいと教室で嘆いていて、言い過ぎてクラスのみんなに笑われていたんだっけ。なんだかせっかくの修学旅行なんだから笑って欲しくて、泣くなよと笑いながら背中をさすってあげた。
夢の中で、今はお世話になった宿のみなさんにお礼を言うらしく、会議室のような場所で生徒代表が、全員に立ってお礼を言うように声をかけていた。
「ありがとうございました」
そこでハッとした。今更ながら自覚する。そうか、こうやってみんなと声を合わせるのも、明後日が最後なんだ。先生たちにお礼を言えるのも、クラスメイトに当たり前のように毎日会えるのも、登下校の道を歩くのも、中学の制服を着るのも。
そこに気づいたとこで夢から覚めた。無自覚に、目の端から涙がこぼれた。
「ただいまー」
お母さんが帰ってきた。現在時刻、17時30分。昼寝にしては長いこと夢を見ていたみたいだ。
「おかえり、お母さん。あのね、さっきまで修学旅行の夢見てたの、それでね…」
何故だろう。なんだか今日は、無性に卒業式の話がしたい。
#過ぎ去った日々