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愛の上に平和が成り立つのか。
平和の上に愛が成り立つのか。
はたまた、イコールか。
私は思います。平和を失った上に愛が成り立つのだと。
これはそんな物語。

銃口が突きつけられる。ここは戦場。荒んだ荒野の中、倒れた自分と、自分の上に馬乗りになって銃口を突きつける美しい黒髪の女。女は言う。
「愛してる」
自分は言った。
「愛してた」
「今は…?愛してないの?」
「どうだかな」
「ふふ、相変わらず変な人ね」

自分と女は敵国同士だ。もっとも、それを知ったのはつい先刻のことだがな。
所謂、禁断の恋。自分の一目惚れだった。確かに愛していた。だが、段々と。でも確実に。女を疑い始めた。スパイなのではないかと。答えは、当たりだ。自分が女をスパイだと気付いたことに女が気付いた。そして、押し倒され銃口が突きつけられた。

「動くな!!!」
しまった。女側の国の兵に囲まれていた。まんまと嵌められた。自分は女の方を見た。敵が囲まれてせいぜいいい気分で笑っていたりするのだろうか。
女は、泣いていた。それも自身のこめかみに銃口を当てて。
「本当に、愛してる。私が死んだら、貴方もこの銃をこめかみに当てて死んでね」
銃声が響く。耳が痛い。飛び散った血と脳漿が辺りを真っ赤に染めた。息ができない。何故だ、それでもなお、自分は銃を手に取った。
ーカチ。
弾が、無い。何度も、何度も何度も。その事実を理解したくなくて引き金を引く。だが、どうしたって現実は変わらない。自分は女を抱きしめた。直後、散弾が自分の背中に降ってきた。薄れゆく意識の中、自分は言う。
「愛してる」

これもまた、ある種の愛と平和のお話。

#愛と平和

3/10/2023, 12:26:38 PM