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明後日は、卒業式。なんというか、あまり実感が湧いてこないのが本音だ。
「昼寝でもするかぁ」
今日は公立受験組の入試本番。私立専願の私は短縮授業でお昼に下校した。現在時刻、14時。眠い。

気付くとそこは夢の中で、修学旅行に来ているらしい。
「うわ、なんか俺泣きそう。」
この男子は確か卒業式で隣に座る三橋だ。なんで泣きそうなのかと聞くと、
「だって、また修学旅行に来れたから。このクラスで」
そういえば、三橋はいつもまた修学旅行に行きたいと教室で嘆いていて、言い過ぎてクラスのみんなに笑われていたんだっけ。なんだかせっかくの修学旅行なんだから笑って欲しくて、泣くなよと笑いながら背中をさすってあげた。
夢の中で、今はお世話になった宿のみなさんにお礼を言うらしく、会議室のような場所で生徒代表が、全員に立ってお礼を言うように声をかけていた。
「ありがとうございました」

そこでハッとした。今更ながら自覚する。そうか、こうやってみんなと声を合わせるのも、明後日が最後なんだ。先生たちにお礼を言えるのも、クラスメイトに当たり前のように毎日会えるのも、登下校の道を歩くのも、中学の制服を着るのも。
そこに気づいたとこで夢から覚めた。無自覚に、目の端から涙がこぼれた。

「ただいまー」
お母さんが帰ってきた。現在時刻、17時30分。昼寝にしては長いこと夢を見ていたみたいだ。
「おかえり、お母さん。あのね、さっきまで修学旅行の夢見てたの、それでね…」
何故だろう。なんだか今日は、無性に卒業式の話がしたい。

#過ぎ去った日々

3/9/2023, 11:33:27 AM