テストで悪い点をとったから?
友達とうまくいってないから?
一緒に帰る友達がいないから?
理由はわかってないけれど
傘をさしているのに何故頬に雫が垂れるのか
秘密を知ってるのは私だけでいいの
いつもいがみあって
些細なことで競い合って
勝ち負け考えて
戦いあってきた僕らだけど
「今は勝ち負けなんて関係ねぇ…!!」
「うん、今は…」
「「あのブラックダイヤモンドを殺すのみ…!」」
ギリィとはをくいしばってる2人に、通りすがりの友人が声をかける。
「いや普通にゴキブリって言えよ」
「「その名を口にするな!!!!!!」」
見事なハモリに友人はたじろぐ。
「いや仲良しかよ」
虫如きで結託する精神に本当尊敬だ
恐らく典型的な、喧嘩するほど仲がいいタイプだろう
雨は好き。
やさしい雨音に包まれて、いつか消えてなくなれそうで。
ぴとん、ぴとんってリズム刻んで
私も同化していく。
どうかしてるよね?
でも、そんな雨の中
誰も気づかない世界の端っこにいる私を見つけて
傘を差し出す貴方は
私の好きな雨を邪魔する
大嫌いな人。
「風邪ひくよ?」
そう笑って
私をこの世に繋ぎ止める貴方が憎くて仕方がない。
それなのに
「…ありがとう」
貴方の優しさが嬉しかったんだ!!
ほんと、どうかしてる
雨は好きなのに
貴方の太陽のような笑顔は嫌いじゃないの。
人魚の歌、それは美しく耽美である。
妖精の歌、それは酔いしれるような闇である。
人間の歌、それは全てを兼ね備えた人工的でかつ、自然的な爆発が積み重なった人類の奇跡である。
最近悪夢ばかり見る。
死んだお父さんが出てきたり、友達と絶交したり、いっぱい怒られたり。
悪夢といっても、お化けがでてきたりとか、金縛りにあったりとかはしない。些細なことだけれども、現実にあったら嫌な、趣味の悪いものばかり。
タチが悪いのは、夢から覚めるまでにその問題は解決できないのだ。
だから、眠るのが怖い。けれど、その思いと反例して眠気は毎回訪れる。そして、為す術なく悪夢を見てしまう。
いつからだったろうか、こんな生活。もう嫌だと泣き出してしまいたかった。
それでも私は、眠ることしか出来ない。今日も目を閉じた。
ふわふわとした感覚。きっと夢の中だろう。周りを見渡すと歪な空間。
目の前には、白と黒の男の人。
白い人と黒い人じゃない。白と黒の男の人なんだ。
それとしか説明が出来なくて、じっと男の人を眺めてると、ニコッと微笑む。とても胡散臭い。
「そこのお嬢さん、なにかお悩みがあるんじゃあないかい?」
私が口を開く間もなく男の人は続ける。
「そしてそれは、夢についてじゃないかい?」
驚いた。図星をつかれて思わず口を閉ざすと、男の人はまた胡散臭く笑い胸に手を置く。
「名乗り遅れました。僕は夢喰いバク。悪い夢を食べてあげるのが仕事さ。」
男の人、基夢喰いバクは未だに胡散臭い笑みを途絶えさせない。だが、私は今藁にもすがる思いだったので、大人しく頼らせてもらいたかった。
「君の悪夢は少々味が薄いけど…まぁ、薄味のほうが僕の好みさ。さあ、僕に身を委ねて──────」
段々意識が朦朧とする。そんな中ふと思いついたのは対価だった。
そんな考えも見透かしたように夢喰いバクは笑う。
「お代はいらないさ。だって、これが仕事だからね。」
その声を聞いて眠りについた。
そこからは、幸せな夢続きだった。
もう、夢から覚めたくないと思うほどに。
よくわからない存在だったけれど、夢喰いバクに感謝だ。
「僕の仕事は、夢を食べること。
夢を食べられた人間は、幸せな夢を見続ける。
そう、現実と夢の区別がつかないくらいに。
そして、もう現実に戻りたくないと夢に縋る。
僕はあくまで悪夢を主食としているが、甘美な夢も悪くない。
僕は夢喰いバク。
悪夢が主食だけれど、
そっと包み込むように…君ごと食べてしまうよ。
そんな、わるーーいバクさ。」