リチ

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最近悪夢ばかり見る。

死んだお父さんが出てきたり、友達と絶交したり、いっぱい怒られたり。

悪夢といっても、お化けがでてきたりとか、金縛りにあったりとかはしない。些細なことだけれども、現実にあったら嫌な、趣味の悪いものばかり。

タチが悪いのは、夢から覚めるまでにその問題は解決できないのだ。

だから、眠るのが怖い。けれど、その思いと反例して眠気は毎回訪れる。そして、為す術なく悪夢を見てしまう。

いつからだったろうか、こんな生活。もう嫌だと泣き出してしまいたかった。


それでも私は、眠ることしか出来ない。今日も目を閉じた。







ふわふわとした感覚。きっと夢の中だろう。周りを見渡すと歪な空間。

目の前には、白と黒の男の人。

白い人と黒い人じゃない。白と黒の男の人なんだ。

それとしか説明が出来なくて、じっと男の人を眺めてると、ニコッと微笑む。とても胡散臭い。

「そこのお嬢さん、なにかお悩みがあるんじゃあないかい?」

私が口を開く間もなく男の人は続ける。

「そしてそれは、夢についてじゃないかい?」

驚いた。図星をつかれて思わず口を閉ざすと、男の人はまた胡散臭く笑い胸に手を置く。

「名乗り遅れました。僕は夢喰いバク。悪い夢を食べてあげるのが仕事さ。」

男の人、基夢喰いバクは未だに胡散臭い笑みを途絶えさせない。だが、私は今藁にもすがる思いだったので、大人しく頼らせてもらいたかった。

「君の悪夢は少々味が薄いけど…まぁ、薄味のほうが僕の好みさ。さあ、僕に身を委ねて──────」

段々意識が朦朧とする。そんな中ふと思いついたのは対価だった。

そんな考えも見透かしたように夢喰いバクは笑う。

「お代はいらないさ。だって、これが仕事だからね。」

その声を聞いて眠りについた。




そこからは、幸せな夢続きだった。

もう、夢から覚めたくないと思うほどに。

よくわからない存在だったけれど、夢喰いバクに感謝だ。




「僕の仕事は、夢を食べること。

夢を食べられた人間は、幸せな夢を見続ける。

そう、現実と夢の区別がつかないくらいに。

そして、もう現実に戻りたくないと夢に縋る。

僕はあくまで悪夢を主食としているが、甘美な夢も悪くない。

僕は夢喰いバク。

悪夢が主食だけれど、

そっと包み込むように…君ごと食べてしまうよ。

そんな、わるーーいバクさ。」

5/24/2025, 1:07:57 AM