【桜】
〈お久し振りです!今回、お手伝いに来て頂けると伺いました。
またよろしくお願いいたします!〉
〈久し振りだな。こちらこそ、よろしく頼む。
皆んな元気か?〉
〈相変わらずの馬鹿ばっかです!〉
〈そうか笑 また会えるのが楽しみだ。〉
〈そちらに行く頃には、桜も咲いているだろうから
また皆んなで花見にでも行こう。〉
〈行きましょう!是非!〉
〈いつでも行けるように準備しておきますね!〉
先輩方とお花見だなんて、いつ振りだろう。
今から楽しみで仕方がない。気が早いと呆れられるだろうか?
まぁこの際、そんなことはどうだっていい。
まずは何を用意しようか?
レジャーシートはまだあったかな?
いやでも、あの公園はベンチ付きのテーブルがあるから…
そもそも場所の候補は他にないのか?
あぁ、考えがまとまらない…。
〈【速報】先輩からお花見のお誘いあり!〉
〈場所どうする?何持ってく??〉
〈気が早すぎるわバカタレ〉
〈桜が咲き始めるのはまだ先だぞ〉
〈でも、先輩たちと会えるの楽しみだね!〉
案の定。こんな返しが来るだろうとは思っていたさ。
想定の範囲内だ。
この“いつも通り”がこの上なく嬉しい。
これけら先も、ずっとこのままでいられますように…。
【君と】
太陽のように明るい君と歩いた道
負けず嫌いな君と励んだ朝練
完璧な君と取り組んだ課題の山
穏やかな君と過ごした休み時間
優しい君と語り合った放課後
馬鹿真面目な君との帰り道
思い出に満ちた君との時間
これが私の宝物
【七色】
「イメージカラー?」
「そう!定期演奏会のパンフレットで恒例だっただろう?」
「打楽器パートだけな」
「部室の安寧を守る戦隊だったか?」
「まぁ、そんな感じ?」
「でも、あれは好きな色を選んでるだけだから…」
「イメージカラーとは違うかもね」
「そこはいいんだよ!ほら、僕らはアンサンブルチームなんだし」
「あー…言いたいことわかったわ。そういうことね」
「たまに先輩方も参加されるから、違う色にしないとな」
「先輩は確か…黄色、白、青だったな」
「で、赤でしょ?」
「ああ。お前は紫だな」
「なぜだ?」
「毒々しいから」
「面白い冗談を言うようになったな」
「君は緑だったよね」
「うん、何となく」
「何となく?」
「強いて言うなら緑かな〜って感じだったから」
「緑は僕も好きだよ」
「お前の方が緑っぽいかもな」
「じゃあこいつは?」
「何色だろうな」
「他に好きな色は?」
「ワインレッドとか、藍色とか?パステルカラーも好き」
「極端だな…。」
「オレンジはどうだ?お前に似合うと思うぞ」
「あ〜確かに!雰囲気に合うかもね」
「ピンクじゃないんだ」
「そんなガラじゃないだろ」
「何、喧嘩売ってる?」
「おいそこ、じゃれるな」
「じゃあ、それぞれの色も決まったことだし…」
「ふふ、楽しみだね」
さて、何を作ろうか
【あの日の温もり】
ある冬の日の寒い夜
君と入ったコンビニで、
一緒に買ったホットドリンク
並んで歩いた帰り道
明るい月に照らされて
よもやま話に花が咲く
着いてしまった分かれ道
お別れするのが寂しくて
歩みを止めて話し込む
それじゃあまたねと手を振った
すっかり冷めたホットドリンク
それでも心は温かった
【手紙の行方】
「はぁ〜…」
部室に入ってから何回目かのため息が漏れる。
「これ、どうしよ」
差し入れと一緒に用意した便箋。
日頃の感謝をしたためるまでは良かった。
ただ、いざ渡すとなると、どうしても気が重い。
「重いかな〜…こういうの…」
口頭で伝える勇気がないなら、せめて文面で…と思ったけど、
どうやら私には、手紙を渡す勇気さえもないようだ。
「はぁ〜〜…ホントどうしよ、これ…」
差し入れのお菓子と一緒に渡そうと、決意して持参した手紙。
こんなことなら、お菓子と一緒にラッピング袋に入れてしまえば
よかった。
「はぁ〜〜〜」
「何回目だよ、ため息」
「……は?」
なんで、ここにいる…?というか…
「…いつの間に来てたの?」
「さっき。で?どうしたんだよ」
「いや、別に…」
…全く気が付かなかった。お前の前世は忍びなのか?
「別にってなんだよ」
「いや、本当に何でもないよ。気にしないで」
「そうか?」
こうなったら…儘よ…!
「それよりさ、これ。差し入れ」
「おぉ、ありがとう。ん、これは…?」
「あぁー…それ、ね…」
ヤバい、なんて言えばいい?言葉がでてこない…
「…気にしなくていいよ」
「なんだそりゃ。今、見た方がいいか?」
「いや!後でいい!なんなら捨てていい!」
いや馬鹿か私は!捨てられるのは嫌だ!
「はぁ?捨てるかよ、バカタレ」
「は?」
「んじゃこれ、ありがとな」
「うん…」
…捨てないんだ。よかった。
「はぁ〜」
さっきまでとは違う、安堵のため息。
もしかしたら、顔が赤くなっているかもしれない。
この際、そんなことはどうだっていい。
何はともあれ、
ちゃんと渡せてよかった。