シャノン

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【手紙の行方】


「はぁ〜…」

部室に入ってから何回目かのため息が漏れる。

「これ、どうしよ」

差し入れと一緒に用意した便箋。
日頃の感謝をしたためるまでは良かった。
ただ、いざ渡すとなると、どうしても気が重い。

「重いかな〜…こういうの…」

口頭で伝える勇気がないなら、せめて文面で…と思ったけど、
どうやら私には、手紙を渡す勇気さえもないようだ。

「はぁ〜〜…ホントどうしよ、これ…」

差し入れのお菓子と一緒に渡そうと、決意して持参した手紙。
こんなことなら、お菓子と一緒にラッピング袋に入れてしまえば
よかった。

「はぁ〜〜〜」





「何回目だよ、ため息」





「……は?」

なんで、ここにいる…?というか…

「…いつの間に来てたの?」
「さっき。で?どうしたんだよ」
「いや、別に…」

…全く気が付かなかった。お前の前世は忍びなのか?

「別にってなんだよ」
「いや、本当に何でもないよ。気にしないで」
「そうか?」

こうなったら…儘よ…!

「それよりさ、これ。差し入れ」
「おぉ、ありがとう。ん、これは…?」
「あぁー…それ、ね…」

ヤバい、なんて言えばいい?言葉がでてこない…

「…気にしなくていいよ」
「なんだそりゃ。今、見た方がいいか?」
「いや!後でいい!なんなら捨てていい!」

いや馬鹿か私は!捨てられるのは嫌だ!

「はぁ?捨てるかよ、バカタレ」
「は?」
「んじゃこれ、ありがとな」
「うん…」


…捨てないんだ。よかった。


「はぁ〜」

さっきまでとは違う、安堵のため息。
もしかしたら、顔が赤くなっているかもしれない。
この際、そんなことはどうだっていい。
何はともあれ、
ちゃんと渡せてよかった。

2/18/2025, 10:43:12 AM