【1年間を振り返る】
この1年は振り返るまでもなく、
充実していたとは言えない。
仕事どころか、プライベートもボロボロで、
このままダメになってしまうんじゃないかと思っていた。
それでも、生きてさえいれば
何かしらの転機に巡り合えるようで、
あるクラブ活動を始めてから、私は活力を取り戻した。
この活動を通して、偶然アナタを知った。
一方的にではあるけれど、アナタを知って、
私の心に、彩りが戻ってきた。
アナタに憧れて、もっと成長したいと
前向きになれた。
まだまだアナタには及ばないけれど、
少しでも近づけていたらいいなと思う。
今年、アナタと出会えて、本当に良かった。
直接伝えることはできないけれど、この世に生まれてくれて、
ありがとう。
【イブの夜】
『…そういえば、今日、イブだね。』
「は?…あぁ、そういやそうだな。」
『…それだけ?』
「なんだよ。どっか行きたいのか?」
『いや?特に何もないよ。』
「何なんだよ。」
『まぁいいじゃん。もうちょっとゆっくりしてこ。』
「…あぁ。」
絶対に教えてなんかやらない。
今日くらい、もっと一緒に過ごしたいだなんて、
絶対に言えない。
―――
『…あぁ、そういうことか。』
「ん?何が? 』
『お前、わかりにくいんだよ。』
「だから、何が?」
『ふん、教えてなんかやらねーよ。』
今日くらい、まだ一緒にいたい。
そう思われていると、期待してしまう。
俺も、同じ気持ちだから。
【寂しさ】
彼が練習に参加できなくなってから、
何日が経ったのだろう。
まだ1週間も経ってはいないはずなのに、
もっと長い間会えていない気がしてくる。
彼がいなくなっただけで、ここも変わってしまった。
厳しい彼のおかげで守られていた規律も、
今やあってないようなものになってしまった。
私がしっかりしなければと思っても、
やる事なす事空回りしてばかり。全く上手くいかない。
(早く、戻って来て欲しい…。)
毎日のように、そう思う。
彼がいないと、何も上手くいかないから。
(本当にそれだけ?)
違う。
本当はわかっている。
素直には認められないけれど、自覚している。
(…寂しい。)
そう。本当は、寂しいだけなんだ。
寂しくて、彼のことばかり考えてしまうから、
周りも見えなくなって、正しい判断もできない。
だから、どうか…。
(早く帰って来て。)
【冬は一緒に】
『お疲れ様です。』
「お疲れ〜。今日もバイト?」
『いえ、今日は真っすぐ帰ります。』
「そっか。じゃあ、途中まで一緒に帰ろう。」
『はい!』
先輩と歩く帰り道。
吹き付ける風は、とても冷たい。
「テストはどうだった?順調?」
『あー、まぁ…ぼちぼちっすね。先輩は?』
「んー。私は…ちょっとまずいかも。」
『他の先輩方と違って、部活一筋でしたもんね。』
3年生の先輩のほとんどは、部活動よりも受験勉強に熱心だった。
そりゃあ、学生の本分は学業なんだから、
一生懸命に勉強するのは当たり前なんだけど…。
それにしても、部活が蔑ろにされている気がする。
2年生の先輩から聞いた話だと、去年までの3年生の先輩方は、
夏期講習と大会前の練習を両立させていたらしい。
今の3年生の先輩は、部活動よりも自分の利益の方が大事らしい。
全員がそうってわけではないけれど。
「まぁ…私はいいんだよ。AOで早く受験終わってるし。」
『そんなこと言って〜。卒業できなかったらどうすんすか。』
「いや、卒業はできる!…はず、さすがに。」
『ほんとっすか〜?』
「大丈夫だって!」
話しているうちに、先輩との別れ道に着いた。
いつの間にか、雪が降り始めていた。
『そんじゃ先輩、また明日!』
「うん、気を付けてね。」
『はーい!』
外がどんなに寒くても、先輩がいれば大丈夫。
卒業するまでもう少し、一緒の時間を過ごしたい。
【とりとめもない話】
「おはよう。」
『おはよう。昨日さ、駅前で先輩見たよ。』
「え、駅前で?」
『うん。』
「何か用事でもあったのかな?」
『どうなんだろうね。』
「あれ?先輩とは話さなかったのかい?」
『いや、会話はしたよ。最近どう?って。』
「それで?」
『それでって言われても…。気を付けて帰れよ、としか。』
「え〜、それだけ?」
『そりゃ、いちいち詮索なんかしないし。』
「あぁ。君はそういうやつだったね。」
『そうだよ。』
「じゃあ、僕にこの話をしたのも…。」
『暇だったから。』
「だよね〜。」
『あと、今度演奏会あるから、みんなで聴きに来いって。』
「用件それじゃないか!」